第10話 最終話なんでこうなった!!!

 教会から戻ると全てはなかったことになっていた。

 めぐみたちは最初から家にいて、なぜか俺はエロ本を買いにコンビニに行って警察に追われ、そして教会で力尽きたところを発見されたことになっていた。

 しかも思いっきり補導された。

 さらに、なぜかめぐみにバレて次の日になって全力で叩かれた。

 なにこのぬるいラブコメ展開。

 ねえ、なんで俺だけ酷い目に遭うの?

 教えて偉い人!


 ……結局、俺はこの世界にいることになったらしい。


 さて、そんな俺はあれからどうなったのか?

 そいつは難しい。

 最後の謎の声を信じるなら、どうやら俺は神(笑)になったらしい。

 と言っても今のところ何の力もない。

 全力で目力を入れてめぐみを透視する実験をしたが目がショボショボしただけだ。

 男版の3人の姿を忘れることすらできない。

 特にめぐみ。


「なに変な顔してるのかな?」


 めぐみがキョトンとしていた。

 俺たち4人は一緒に学校に登校しているのだ。


「ナンデモナイヨ」


「嘘をついている顔だな」


 天野がツッコミを入れる。

 なぜわかるのだ!


「御影はすぐ顔に出る」


 田牧がバッサリ斬る。

 お前ら酷えな。

 せっかくがんばったのに。


「いぶき……あのね」


 そう言うとめぐみが俺の腕をつかむ。

 めぐみさん胸が当ってます……つうか無理に胸に当てようと引っ張ったせいで俺が囚われの宇宙人みたいになってます。

 好感度MAXなのはわかってるのに俺はつま先立ちです。

 締まらない格好です。

 めぐみに連行された俺はつま先立ちでチョコチョコと歩く。

 身長がもっと欲しいでゴザル。


「昨日怖い夢を見たんだ」


 そんな俺の不自由さをわかっているのかいないのかめぐみが話し始める。


「男の子にされて嫌なことをさせられる夢だったんだ……でも一颯が助けに来てくれて悪いやつを倒してくれたんだ。すごく生々しい倒し方だったけど」


「ぬは!」


 なんですと!

 記憶があるのか!

 俺が鼻水を垂らしているとチビッ娘天野が薄っぺらい胸を張って言う。


「それでめぐみに相談されたんだがな、私も同じ夢を見たのだよ」


「ばるぼんげ!!!」


 俺は意味不明な悲鳴を上げた。

 うわああああああああああああ!

 男バージョンの全員殺しちゃったよ!

 ねえどうすんの?

 俺は焦る。焦りまくる。

 すると今度は田牧だ。


「私は御影に殺された」


「おむびゃえ!!!」


「でも最後は助けてくれた」


 俺はピクピクと痙攣していた。

 なぜだ……なぜ貴様ら記憶がある……

 焦りまくる俺に天野が微笑む。


「つまり全員同じ夢を見ていたわけだ。それでだ、詳しく話を聞かせてもらうぞ。嫌とは言わせんぞ」


 ばしゅッ!

 俺は鼻血を出した。


「は、はい……」


 こうして俺は連行されたのだ。

 囚われた宇宙人ライクに。


 放課後。

 俺は適当な空き教室に連行された。


「さて……御影……全て話してもらうぞ」


「それが……ですね……お話としてはたいへん込み入った事情で……」


 俺は洗いざらい白状させられる。

 神との死闘。

 そして決着を。


「そうか、つまり神は自分の死を回避するために行動していたのか……」


 天野が納得していた。

 だがそこに田牧が異論を挟む。


「でもおかしい。神はなぜ自ら滅ぶような真似をしたの? 御影は本気で怒らせたら世界の果てまで執拗に追いかけてきて復讐するタイプ。敵に回すべきじゃない。それなのに何度も御影に挑んでなんども負けた」



 天野はふくれる。

 俺も一緒に鳴ってふくれる。

 酷いじゃないか!

 まるで俺が粘着質のサイコパスみたいじゃないか!


「ふくれてもダメ」


 酷い!

 じゃあ真面目に考えてやろう。


「もしかして……神も……誰かに強要されていた?」


 俺の口が渇いていく。

 だってそうだろ?

 俺を神認定した誰かの声を聞いたんだ!

 田牧がこくりと頭を下げて肯定した。


「まだ終わってない」


「待てーい!!! こんなハードな戦い2度も3度もできるか!!!」


 俺はエガちゃんのように指をさしながら立ち上がる。

 そんな俺を見て田牧はくすりと笑う。


「大丈夫、御影ならなんとかできるから」


「できねー!!!」


 俺はエガちゃんのようにびよーんと跳ねる。


「ねえねえ。みんな何か甘いもの食べに行かない?」


「めぐみさーん!!!」


「そうだな。食べに行こう」


「天野ー!!!」


「大丈夫。御影の分は私が驕る」


 ほえ?


「ちがうぞ美沙緖。私たちで驕るだろ?」


「うんそうだね!」


 俺の話が伝わっているのか伝わっていないのかはわからない。

 だがなんとなく俺は満足した。

 俺の復讐はこうして真犯人をぶち殺して終わったのだ。

 めでたしめでたしっと。


 俺たち3人はファミレスに行った。


「それでさ、あのアイドルが……」


「それであの芸人が……」


「漫画……面白い……」


 信じられないほどくだらない会話。

 それが貴重だった。

 全てが終わった今、俺は3人と会話を楽しんだ。

 ああ、こんなに楽しいのはいつぶりだろうか?

 俺はもう神がどうたらとかはどうでもよくなっていた。

 もう全て忘れてギャルゲーみたいな日常を楽しんでやるのだ!

 ひゃっほー!!!

 俺はテーブルを見た。

 呼び出しブザーが見える。

 ヤケに大きい。


「あ、これね。占いがついてるんだよ!」


 めぐみが楽しそうに言った。

 へー、そんなのがあるのか。

 俺はブザーを手にとってまじまじと見た。

 よし。


「んじゃやってみるか!」


 100円玉を入れてレバーを引く。

 ガチャンという音と共に紙が出てくる。

 俺は紙を開く。



 大吉

 待ち人 : あたらしい神来たる

 仕事運 : 神いわゆるゴッド

 恋 愛 : 3人と恋愛できたら勝利

 生 活 : 神として勝負を受ける義務が発生する



 俺の手が震える。

 オイコラ! なにも終わってねえじゃねえか!


「どうしたの?」


 めぐみがきょとんとした。

 俺は白目が濁りきった、瞳孔のかっ開いた顔で答える。


「ナンデモナイヨ」


「嘘だな」


 天野が紅茶をすすりながら言った。

 だからなぜお前はわかるんだ!


「だから御影は嘘が顔に出るタイプ」


 田牧も答える。

 うがああああああああああああああッ!

 俺が絶望に打ちひしがれた顔をしていると天野が笑った。


「どうだ? 今回は我々はゲームに不参加だったが、これから参加してみるというのは?」


 そう言うと天野はおみくじを引く。


「そうだね。いぶきにだけ負担をかけちゃダメだよね」


 めぐみが天野に続く。


「私も参戦」


 最後に田牧も参戦する。

 そして3人は出てきたおみくじを3人だけで見せ合いっこする。

 なにこの疎外感。

 天野がにやあっとわらった。


「ほう、3人ともゲームのルール説明か……」


 俺にはなかった特典だと!!!


「さて御影……どうする?」


 さて、このあと……時系列的には未来なのだが、俺は神どもとの命がけのゲームに身を投じることになる。

 そのたびに過去に戻ったり未来に言ったり忙しくなるのだ。

 さてさて果たして俺はその神に恨みを買ったのか?

 そもそも俺は何者なのか?

 それがわかるのはずっと先のことなのだ。


 3人がイタズラっぽく笑いながら俺を見ている。

 俺は乾いた笑いを漏らす。



 どうしてこうなった!!!



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終焉のパラドクス 藤原ゴンザレス @hujigon

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