第3話 これなんてエロゲ?

 これなんてエロゲ!

 俺は心の中で叫んだ。

 幼なじみと一緒に登校などというけしからんイベントが発生したが、俺の知ってる幼なじみは身長198センチの怪獣デブのヤンキー野郎だったはずだ。

 こんなモデルみたいな体型と高身長のふわふわ女子ではない。

 つかお前本当に中学生か!


「なあに? どうしたの? 今日のイブキ変だよ」


 めぐみが首をかしげた。

 その様子は少しゴールデンレトリーバーのようだ。

 ちょうど髪の毛も同じ色だしな。

 つい撫でてやりたくなるがじっと我慢だ。


「ナンデモナイヨ」


 変なのは世界の方じゃい!

 そんなことは言ってもしかたがないから俺は反論を飲み込む。


「まあいいけどさあ。天野っちや田牧ちゃんに変な態度とったらダメだよー」


 それは大丈夫だ。

 女子をいきなり殴るほど俺は腐っていない。

 男ならぶん殴るがな。


「今日のイブキ、なんかやだ」


 めぐみがむくれた。

 むくれてもダメ。

 結局俺は恵とほとんど話し合うこともなく学校に着いた。


 中学時代の記憶と同じ教室。

 同じクラスの雰囲気。

 ただ違うのは、開幕スタートダッシュで虐められていた俺がぼっちではないこと。

 それにいじめっ子3人が女子になっていたことだ。

 天野。それに田牧。めぐみもだ。

 俺は特に天野と田牧の2人を注意深く……正直言ってややパラノイア気味に見ていた。

 と言っても視力が低下しはじめた中学の俺では顔までは確認できない。

 あとで眼鏡を買わねば。

 って、なに当たり前のように俺は過ごしてるんだ!

 もしかして記憶は全て俺の妄想で、俺は幼なじみが迎えに来るリア充だったんじゃないだろうか?

 ってないわー!


「なにを変な目で見てるのかな?」


 なぜか頬を膨らませためぐみが俺の襟を掴む。

 中坊とは思えないほどに身長の高いめぐみにつかまれたら俺はまるで悪さをした子猫のようではないか!

 にゃーん。


「離すにゃー」


「離さないにゃー。って、もーやだー。イブキのばかぁ」


 猫の真似をするとめぐみの機嫌が良くなった。

 くくく! しょせん中坊、チョロいぜ!


「ところでめぐみにゃん」


「もーやめてよー。なに?」


 俺は朝からずっと考えていた。

 こちらの世界の財前、つまり『めぐみ』は俺に好意的だ。


 いっそのこと巻き込んでしまって味方につけてしまえばいいのではないだろうか?


「悪いけど、昼休みに付き合ってくれない?」


「うん」


 はいそこ。顔を赤らめない!

 そういうんじゃねえからな!



 給食を食べ昼休みになると俺たちは屋上に出た。

 なぜかめぐみはモジモジしている。


「あ、あのね。私はね、もうちょっと今までの方がいいかなって……」


 なにを勘違いしてやがる。


「めぐみ」


「ひゃ、ひゃい!」


 だから違えって!


「実は俺には昨日までの記憶がない」


「へ?」


「いやだから記憶がすっぽり抜けている」


「どういうこと?」


「昨日まで……と言っても俺の主観の話だが、俺は20歳だった」


「遅生まれのいぶきはまだ12歳だよ?」


「だから主観だと言っただろ。ナイフで刺されて目覚めたら12歳に戻ってたの!」


「……なにそれぇ。またからかってー」


 うんわぁ。

 なにそれ、俺とお前はからかうほどの仲なの?

 この世界の俺はリア充なの?

 爆発するべきなの?

 くっそ自分なのに憎らしいぜ!


「とにかく記憶がないのだ」


「はいはい」


「それでだな。ここには刺される前との違いがあるんだ」


「はいはい」


 めぐみはあからさまに興味のない様子だ。


「前の周にはお前と天野と田牧がいなかった」


 正確には「三人とも野郎で俺を虐めてた」だがそれは黙っておこう。

 うん。それでいい……と、一人で納得したまさにその瞬間だった。


「いぶきのバカアアアアアアアァッ!」


 すっぱーん!!!

 それはビンタだった。

 めぐみの長身から繰り出される本気のビンタ。

 それは同じ階級の選手の繰り出す右フックよりはるかに重かった。


「もう意地悪ないぶきなんて知らない!!!」


 めぐみは怒鳴るとスタスタと行ってしまった。

 なぜだー!!!

 俺は大の字でひっくり返っていた。

 うーん……これからどうしようか?

 めぐみにも謝らなきゃ……ってなぜ仲直りしようとか考えてるんだ俺!

 本物のめぐみは怪獣デブ、怪獣デブ、怪獣デブ。

 俺はブツブツとつぶやいた。

 すると誰かが大の字になってひっくり返っている俺の顔をのぞき込んだ。

 8年前でも珍しい黒髪ロングヘアー。

 細くて背が低い女の子だ。

 今はちびっ娘だがあと三年もしたらとてつもない美人になるだろう。


「めぐみを泣かせたようだな」


「パンツ見えてるぞ」


 ぶぎゅる。

 問答無用で顔を踏まれた。

 中学3年間をサンドバッグとして過ごした我にその程度の攻撃が通用すると思うなよ!!!

 ……自分で言ってて少しへこんだ。


「くまさんか」


 ぶぎゅるぎゅるぎゅる。

 顔を踏む足に力がこもる。

 ふふふふふ。

 こいつからかうと面白ーなー!

 俺が悪い顔をしていると少女はあきらめたのか本題に入った。


「御影、君は記憶がないって言ってたな」


「どこから聞いていたんだ?」


「最初からだ」


「えっち」


 ぶぎゅるぐりぐり。

 ふはははは! きーかーぬーわー!


「記憶がないって言ってたな」


「言ったぞ」


「面白い。なあ美沙緖みさおどう思う?」


 『みさお』だと?

 田牧の野郎か!


「わからない。でも今日の御影くんは変。御影くんはもっと人見知りするタイプ。めぐみ以外に軽口聞いたのを初めて聞いた」


 悪うございましたね。

 8歳年取った分だけ図々しくなっただけだよーっと。


「そうだな。おい御影、この天野麗あまのれいが君の話を聞いてやろう!」


 あ、あまのー!!!

 このちびっ娘が天野だと!

 どうやら天野は偉そうなのだけが共通点のようだな。

 田牧は頭良さそうな所だな。

 なんだろうかこのカオスな世界……

 そのカオスの原因と話会うのは気が引ける。

 だが俺には解決の糸口が他には思いつかない。


「わかった。じゃあ話すよ……」


 こうして俺と3人の世界を救う話がはじまるのだった。

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