異世界ものは苦手。そういう人こそ読んでみてほしい、極上ファンタジー。

 異世界系というと昨今のブームのせいで浮ついたジャンルと誤解されがちですが、実は古くから存在する伝統的なものであったりします。
 今作は異世界に召喚された地球人が経済政策などで作品の舞台となる魔物の国に多大な影響を与えていく、という内政チート系の作品を土台にしているものの、語り部が現地の青年であることも含め、往年の(つまり流行りの源流たる)異世界ファンタジーの色合いが濃いように思います。
 内容としては非常にストイックで、この手の題材を扱っていると堅苦しさを感じそうなものの、専門知識などが驚くほど簡潔かつわかりやすく説明されるため、金融や経済に詳しくなくとも、読んでいてストレスを覚えることはありません。
 主人公のふたりは感情移入しやすい好人物、脇を固めるキャラクターもバリエーションに富み、ひとりひとりにドラマが用意されているため、エンタメ作品としても申し分のない出来。とにかく隅まで丁寧です。
 とくにラストは文句のつけようがない美しさで、最後まで読んでよかったと満足すること請け合い。
 カクヨムでも評価されつつありますが、作品のポテンシャルを考えるともっともっと評価されるべき作品です。ぜひご一読を。

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