簡潔だが奥深い物語、かつガンアクションのお手本とでもいうべき作品

富裕層の特区『オーバー』とそれ以外の区域『アンダー』に分かれた世界で、民間軍事企業の傭兵である少年の戦いの日々を描いた本作品。闇が深そうな過去・凄腕などの点から、主人公最強系の要素が見られるが、それが時々放つ軽薄な優越感とは無縁のハードボイルドな作品となっている。
一話完結型の話が多く、テンポの良さと展開の早さは非常に読みやすく、一方で奥深さも感じられる内容となっている。物語の主幹である戦闘シーンも読みやすさを重視しているのか簡潔で、コアな読者にとっては物足りないかもしれないが、多くの人が読んでいて楽しめるような文章になっている。
主人公は悪に染まってはいないが、物語全体からは少しダークな雰囲気が漂っており、その絶妙な匙加減が読んでいて心をときめかす。序盤中盤でぼかされた真実や明らかにされていない謎などが、今後どんな風に回収されるかの期待が大きい作品で、これからガンアクションを書こうとする物書きに対しては、是非一度は目を通してみると良い作品だと思う。

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