灰のように苦くて、花のように美しい物語。

花咲爺さんの物語には、様々な意味が込められているといいます。

桜という花自体が彼岸と此岸の間に咲くというモチーフと見られること。
これは春の一時に華麗に咲くという儚さから日本人が想起したものです。冬から春へと移り変わり、生命が再生する、その象徴。
死の象徴である灰を撒いて花を咲かすというのは、死と再生の物語でもあります。


思春期の主人公が出会う出来事や葛藤、そこからの再生。
子供である自分が死に、その灰から生まれる自己という存在。
それはまさに、「青春」が花咲くプロセスのストーリーであると言えます。




…なんて色々な解釈と講釈を垂れたくなるくらい、完成度の高い物語です。
御伽術師という設定がストーリーと人物とに綺麗にかみ合い、歯車が回る様に目が離せず、一気に読みきってしまいました。

現代の花咲師。
それはきっと、人が先へ進むためにあるものなのだと思います。

物凄く面白かったですし、最後はうるっとさせられました。

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