天涯孤独だった少年が幼少期に受けた、とある少女からの施し。
初めて知った愛情が温情となり、後に彼の恩義は一人の少女の運命に大きく変えていくことになる。
情けは人の為ならずという諺がありますが、今回はそれすらも凌駕する恩に報いる青年の生き様を描いた素敵なストーリーでした。
天涯孤独、闇社会で人を殺して生きていくしかなかったはずの青年が突き進んだ道が、たった一人の女性を影から守る守護神となること。
もしかしたら日の光を当たる事は二度とないかもしれませんが、もしかしたら何時かきっと……とIF未来を想像出来る分、ビターハッピーな中々美味しい締めくくりでした。
貧民として産まれたのも。
奪わなければ生きられなかったのも。
殺す術を覚えたのも。
――ひとつのパンに、救われたのも――
それは、ある意味、逃れられぬ運命であり、避けようのない人生。
そして、奇妙な依頼と再会、転機。
ただ、抗うことも出来ず、流れるような人生の中で、運ばれていく命から、その命の価値を知り、己が使い方を示す。
それこそが、使命と呼ぶに相応しい生き方ではないか。
交差する光と影の、背中合わせの人生を歩む両者の間に、しっかりと結ばれた絆の物語。
まさか、その二つを結ぶのが、ただひとつのパン、だとは。
片腕を失った?
……いいや、もっと大事な何かを、得たのだ。