第11話 復讐
「初めまして伊藤リクです。」
目の前の二人も、僕すらも想像していなかった、僕のこの世界への復帰。
目の前に立つは、僕の実の父親と、愛人の子である俺の母親。当然だが、初めましてではない。
寺内理久斗は澪さんと共にあの学園を抜け出したときに死んで、亜実の兄になることを決意して伊藤リクが生まれた、それだけの話だ。
プロフィール一切非公開、ぽろぽろと吐いてはいるが、決定的なことは何一つない。当たり前だ、伊藤リクに過去はない。誰一人として俺のことは知らない。
誰も寺内理久斗だなんてわかるわけがない。
この呪われた才能でのし上がって見せた。そうして、この日が来た。
「今回は、かの有名なお二人の息子役を務めさせていただくこととなり、誠に光栄でございます。」
映画の脚本とキャストを聞いたとき、思わず俺は笑った。誰かが知っていて書いたのかと思ったくらいだ。
男性陣には哀しい復讐を…と言われてしまっているが、女性陣には、やってこい、と応援される複雑な気持ち。
いくら澪さんをはじめとしたみんなと出会えたとはいえど、幼き頃の大切な時間を愛無き鬼に食われたことを許したわけではない。
別に親に不都合を負わせるつもりはない。
ただ、捨てたはずの息子の面影に追われ続ければいいと思うだけだ。
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