第9話 因縁

「久しぶりですね。苑、瑞希。」

「園。再び3人で会う日が来るとは思わなかったよ。」

「そのつもりもなかった。」

「私たちの間の承認はお互いでしかない、そう決まっていたでしょう?紫織義姉さん、ご足労ありがとうございます。」

話にだけは聞いていた、私の旦那様たちの過去、それが今一堂に集結している。義妹に当たる彼女だが、私との関係は希薄で、書類上も、感情の上でも、私たちは幼いころから知るにも関わらず、限りなく他人に近い、姻戚だ。

「いえ、私の子のことですから。」

私は小さく受け止めるにとどめる。3人の共有した過去の生み出す距離には踏み込むことは出来ない。

「俊とききょうは私が責任をもって、見守りましょう。幸い我が子の年は、近い。瑞希も協力してくれるのでしょう?」

「ああ、隆は俊と仲がいいからな。自分たちの罪を背負わせるようで気が引けるが…。」

「もとは、苑がしっかりしないから…。」

「仕方がないだろう、罪の子に当主に対する権力なんてほぼない。紫織には、悪いことをしている。」

「私はすべて覚悟して、あなたのもとに嫁いだ。子と二度と会えないわけでもない。息子の意志は尊重したいし、娘に寂しい想いをさせるのも本意ではなかった。」

そう彼にいった私の言葉は責めているように聞こえなかっただろうか。哀しいことに、私は息子より、娘より旦那が大切だった。この人に惚れぬいたのだ。彼らの過去を多少なりとも知ったうえで、それを利用して。

「違うわ。私たちは罪の子なんかじゃない。罪そのものよ。」

「園…。」

「おばあ様だって、許してはいないのだから。」

「それに関しては、お互い様だよ。」

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