第14話 乙女ゲーのなんたるを

「ああ、あんたたち、近々家族が一人増えるから。」

ばりばりのキャリアウーマンというのもおこがましいほどの、ワーカホリックな母親が…いや、18にもなれば母親が家にいないのはありがたいことのほうが多いが。ともかくそんな母親が久々に帰ってきて開口一番今の言葉だ。

「母さん再婚するの?まあ別れて8年だし、反対はしないけど。」

次男晴が一番妥当な質問をして、4兄弟そろって首肯する。

「ろくでもない男じゃなけりゃな。真冬も高校生だし、問題はねえよ。」

弟の真冬も、無表情ながら頷く。それなのになぜか母さんは目をそらしながら

「いや、ちがくてね…。」

「まさか母さん、妊娠したの?」

長男の奈月がありえてたまるか、といった発言をする。

「違うけど…18の娘さんで…。」

「亜樹と同い年…?母さん、ごめん、意味が分からない。」

連れ子なら、一人、とは言わないだろう。母さんは言いづらそうに。母さんは一つため息をついて

「亜樹に聞いても無駄だったわね…。奈月、晴、亜樹、真冬。」

「ん?」

「その子ね、別れたあんたらの父さんの弟の娘。」

「は?」

「ひと月ほど前、その娘さんのご両親が事故で亡くなってね…。私も元夫の弟夫婦だから、一応葬式に行ったの。」

「ああ、だから先月喪服着てたのか。」

俺はさっぱり覚えていないが、真冬には記憶があるらしい。頷いている。

「そこで、忘れ形見だっていうセーラー服の女の子がいて…。そしたら、引き取り手がなくて元旦那が引き取るっていうから、腹が立って、うちで引き取るって啖呵切っちゃった。」

「そんなことだろうと思ったよ!!」

晴が呆れを隠さずにいう。

「だってさあ、自分の息子も満足に育てられない男が、年頃の女の子引き取ってうまくいくとは思えないじゃない!かわいそうじゃない!幸いウチは金はあるし!」

「ああ、あるよ!!母さんがアホほど稼ぐからな!!」

母さんの逆切れに近い啖呵に、長男である奈月兄はふわふわと笑っている。本当に頼りがいのない兄だ。

「母さん、冷静に考えろって!確かに父さんのところも良くないと思うけど、うちだって血気盛んな男4人所帯だぞ!そこに若い娘さん放り込むなんて非常識もいいとこだろ!」

「晴兄さん、冷静なのか何なのかよくわかんない。」

「真冬、僕もそう思うよ。」

「ってなわけで従姉妹に当たるから、よろしくね。」

晴のことをひらひらと母さんは、手を振って遮る。

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その後の彼ら。愛の物語。 水無瀬 @Mile_1915

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