第7話 ゆとりの終わり

「あー!ムカつく!」

「クダ巻かないでよ、湊。」

こいつは酒癖が悪い、絡み酒だ。高校時代からの付き合いの湊は、一応人前に立つ仕事をしているので、外で気楽に管を巻けないのだろう。まあ、そこは湊ほどではないにしても、私も同じではあるのだが。

「だってさ!ゆるりも思わないのかい?」

「ゆるりはやめて、湊。」

昔の愛称だ。私はあまり好んでいないのだが、不本意にも定着してしまっている。毎度毎度止めてはいるが、無意味なこともわかっている。

「上も下も!私たちの世代をバカにする。」

「湊はましでしょ。」

湊の職業は特殊だ。実力主義で年齢よりかは、能力と歴がものをいう世界にいるんだ。

「私なんかはね、上司にはゆとりと言われ、少し上には私以上のゆとりが構え、下には同じゆとりだと思われ。でも、ゆとりはギリ抜けてるからただの出来ないやつだと思われるのよ?たまったもんじゃないわ。」

私も大概酒が回っているのだろう。何を言ってるか正直わからない。さっき湊の酒癖が悪いとは言ったが、私も良くはない。これが、余計に家で呑む理由だ。ストッパーがない。

「ゆるり…。」

「湊は実力でねじ伏せられるんだからいいじゃないか。」

「…そうはいったって…。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る