45.【かつての泉の番人は】



泉の水は清らかか


 それを知る者はもういない




かつての泉の番人は


 泉を狙う者に追い出され


清水はとうに色あせた



泉の森は薄暗く



もはや立ち入る者はない


悲哀を乗せて

 どこからともなく響く声


泉からだと気付く者はない


哀れ 哀れと鳴く鳥の


影を追う男の姿を映し出す



とたんに泉は清きを湛え


男の喉を潤した



番人は

 再び泉を守るため



森は男を護るため


濁らぬようにと祈りを続け


 甲高く鳥は鳴く


もう忘れないよと

 鳥は鳴く




2020/06/03

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