人間であることを失っても、物語を綴る価値とは

BGM: “Meddler” - August Burns Red -

昔は、早く過ぎ去ってしまうゲームの時間が愛おしかった。
それは一人の時も、友達とやる時間もそうである。

だがなぜだろう、いつまでもゲームをやって過ごしていたい、そう思っていた自分はもういない。
最早ゲームをやる体力がない? ゲームが面白く無くなってしまった?それとも自分が面白くないやつに変わってしまったのか?

でも、未来に生きる「赤野工作」という男は、その気持ちのまま老いていった。ゲームを楽しむために全身をサイボーグにして延命し、遂には脳を「楽しい」しか理解できない人工知能になってしまうことを望んだ。

それを不幸だ、可哀想だ、恐ろしいと断じる人は多いだろう。
私はどんどん彼のレビューを見ていくうちに涙を禁じ得なかった。
だがそれは決して同情でも哀れみでもない。
ちっぽけな一ゲーマーとして、彼がとても羨ましく思えたのだ。
そうだ、そこまでしても、ゲームは受け入れてくれる。ゲームが面白くなくなるなど、自分が変わってしまうなどあり得ないのだ。

なぜならゲームはもともとから「面白い」ものだったのだから。


改めてレビューに参りました。書籍化おめでとうございます。
これからの工作活動に、埋められたE.T.のご加護がありますように。

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