リングに向かうロニーに熱い声援を送りたい。「ロッキー」の世界、再来。

評価の星を4つか5つ付けたい。私にそう思わせた傑作です。
私はスポーツ観戦が嫌いな男で、自分で動くのもラジオ体操くらい。ボクシング試合は映画「ロッキー」でしか見た事がありません。そんな男でも、本作品は凄く楽しめます。
打ち合うシーンが丁寧に描写されており、素人でもイメージが湧きます。ボクシング試合に攻守の戦術や作戦が有る事を初めて知りました。てっきりセコンドは応援と水分補給しかしていないと誤解していたので、目から鱗でした。
更に物語を面白くしているのが、登場人物の織り成す人間関係。隠された過去、伏線として織り込まれた人の”縁”。人間ドラマは「ロッキー」の遥か上を行きます。
ベースには、沈滞した尼国ボクシング界に喝を入れようとする野心。それに個人の復活劇を絡ませる、ニクいストーリー展開です。
また、最終章「人物紹介」には作者の洒落た粋を感じます。
ところで、本作品はカクヨム界で「イスラム3部衆」と呼ばれているそうです。残り2作品は、山野ねこ氏「ブラッド・ライン」、猶氏「撃墜されるまで、あと何分?」。いずれもテロリストが登場しますが、脇役なり背景の一部です。全て読み応えが有り、三者三様です。読み比べてみると面白いですよ。

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