13月の来ない年の瀬、彼は、河原に解けない雪を降らせた

大学院の博士課程に在籍する「私」。
才能がないことを自覚している。
そもそも、文学研究科から研究職に就くこと、
いや、博士号の取得すら本当に難しい。

張り合いのないまま、13月は来ない年末。
自分の将来への漠然とした失望。

隣を歩く粗削りな修士2年生への、
期待のような嫉妬のような何か。
でも、仏頂面でふてぶてしい彼が
いきなり「雪」を降らせたとき、

何も解決なんかしていない。
なのに、
この現実も捨てたもんじゃないんだな、
と、雲間から光が差したように思った。

その淡々として繊細なリアリティ、
すごく好き。

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