拝啓、芥川先生へ

作者 神楽坂いずみ

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★★★ Excellent!!!

いやぁ、おかしいなぁ。
芥川先生、およ、文豪だぞ。
冒頭から、ハナかんでるし。ぷぷっ。
というように出会った文章。

いや、もうジェットコースターなみに
引き込まれて、読んでしまった。
ああ、なんということだ。すごい好みの文章。
読みやすい。でも浅くない。
ひとつひとつを掌にきちんと載せたくなる。

生きていくうえでの焦り、十三月に私も気持ちをのせる。
そして、まさかの最後の光景。
まさかのそれが、美しい雪に成り得るだなんて。

★★★ Excellent!!!

「私」は博士課程四年目。自分の、研究者としての才能に限界を感じている。
後輩の修士二年の斎藤くんは若くて実力に溢れ、未来は輝いているように見える。

博士号を取らなければ研究職のスタートラインに立つこともできないが、取っても研究者として職に就ける可能性は低い。そもそも、博士号を本当に取れるのか。
かといって、自分の限界を認め、諦めて方向転換するのも怖い。八方塞がりの現状維持でうだうだしていても、無情にも時は過ぎていく。

……という、博士課程院生の宙ぶらりんな不安感が見事に描かれていて、胃が痛い……。
そんな中、後輩が見せてくれた小さな希望は、何も解決したわけではないけれど、生きていてもいいんだな、と思わせてくれます。
素晴らしい作品でした。

★★★ Excellent!!!

大学院の博士課程に在籍する「私」。
才能がないことを自覚している。
そもそも、文学研究科から研究職に就くこと、
いや、博士号の取得すら本当に難しい。

張り合いのないまま、13月は来ない年末。
自分の将来への漠然とした失望。

隣を歩く粗削りな修士2年生への、
期待のような嫉妬のような何か。
でも、仏頂面でふてぶてしい彼が
いきなり「雪」を降らせたとき、

何も解決なんかしていない。
なのに、
この現実も捨てたもんじゃないんだな、
と、雲間から光が差したように思った。

その淡々として繊細なリアリティ、
すごく好き。