それぞれが一つの出来事に向き合いつつ、それぞれに感情を揺り動かし、時に衝突することもあれば、理解し合おうと努力したり――。
そして、その関わりの中で、主人公である「僕」を含めたそれぞれが、自分を見つめ直し、成長していく――。
この心霊ミステリィ作品には、幽霊の噂を軸にした、時に痛々しさを感じさせながらも、瑞々しく彩られた青春の一風景が、広がっていました。
幽霊を、ただのオカルトとしてではなく、論理的にアプローチしている点も、新鮮味があり、持ち前のオカルト魂を刺激され、かつ、幽霊に対する自分の考えも、これまでとちょっと違ったものに変えさせられてしまいましたね。
幽霊に対する見解の違いで二人の少女が対立する様は、テレビのオカルト番組で、肯定派と否定派が言い争う場面を思い浮かべてしまい、思わずくすりと来てしまうということも。
シリアスにストーリーが展開していく中で、アクセントとして、コメディタッチが含まれているのも、良い起伏になっていると感じました。
ミステリィとしても、解き明かされていく謎が、よく練られているだけでなく作風とマッチしていて、すんなりと入ってきました。
幽霊や霊媒と言ったオカルト好きな方であれば、いい刺激になるでしょうし、そうでない人であっても、恋愛要素を含んだ青春ミステリィとしてだけで読んでも、十分に楽しめる逸品です!
読み終えて、まず完成度の高い作品だな、と印象を受けました。
一本、筋の通った、しっかりとしたストーリーを練り上げていますね。
メインキャラクターの数が絞られていて、ダブルヒロインの性格や背景の対比の中心に上手く、シニカルな主人公が当てはめられているおかげでしょう。
カタルシスを覚えたのは、ストーリーの達成の過程でちゃんと主人公、そして脇を固めるヒロイン達も成長出来ているからだと思います。
己を見つめ、他者を理解し、一歩進むことが出来るのは、若さ、青春、学生時代の特権とも言えます。
楽しく読ませて頂きました、ありがとうございます。
幽霊を題材にしたミステリーですが、高校数学の幾何の参考書を読み進めているような錯覚に陥りました。
主な登場人物は3人の男女ですが、依拠する思考の前提が異なるだけで、私には3人とも論理的思考の権化みたいに感じられました。非人間的なキャラクターではないのですが、そのセリフを理解するのに精一杯で、キャラクターを吟味する余裕を失っていました。
ただ、作品に散りばめられた要素は全て、無駄無く論理で繋がっています。見事としか言い様がありません。そのロジック展開が見事で、幽霊が単なる記号になっています。少なくとも、怖くはない。良い意味で、不可思議という感じもしない。怪談よりミステリー小説。でも、私には数学の参考書がピッタリくる例え。
そういう知的好奇心を満たせる作品です。
最後にどうでも良い話ですが、一魅という字はどうなんでしょう?私、魅力より魑魅魍魎という単語を連想してしまって・・・。まぁ、この作品には相応しい名前ですけど。