極めて完成度の高く、そして数学のようなミステリー。

幽霊を題材にしたミステリーですが、高校数学の幾何の参考書を読み進めているような錯覚に陥りました。
主な登場人物は3人の男女ですが、依拠する思考の前提が異なるだけで、私には3人とも論理的思考の権化みたいに感じられました。非人間的なキャラクターではないのですが、そのセリフを理解するのに精一杯で、キャラクターを吟味する余裕を失っていました。
ただ、作品に散りばめられた要素は全て、無駄無く論理で繋がっています。見事としか言い様がありません。そのロジック展開が見事で、幽霊が単なる記号になっています。少なくとも、怖くはない。良い意味で、不可思議という感じもしない。怪談よりミステリー小説。でも、私には数学の参考書がピッタリくる例え。
そういう知的好奇心を満たせる作品です。
最後にどうでも良い話ですが、一魅という字はどうなんでしょう?私、魅力より魑魅魍魎という単語を連想してしまって・・・。まぁ、この作品には相応しい名前ですけど。

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