幻と現実の境界線上で。


 それぞれが一つの出来事に向き合いつつ、それぞれに感情を揺り動かし、時に衝突することもあれば、理解し合おうと努力したり――。
 そして、その関わりの中で、主人公である「僕」を含めたそれぞれが、自分を見つめ直し、成長していく――。

 この心霊ミステリィ作品には、幽霊の噂を軸にした、時に痛々しさを感じさせながらも、瑞々しく彩られた青春の一風景が、広がっていました。

 幽霊を、ただのオカルトとしてではなく、論理的にアプローチしている点も、新鮮味があり、持ち前のオカルト魂を刺激され、かつ、幽霊に対する自分の考えも、これまでとちょっと違ったものに変えさせられてしまいましたね。

 幽霊に対する見解の違いで二人の少女が対立する様は、テレビのオカルト番組で、肯定派と否定派が言い争う場面を思い浮かべてしまい、思わずくすりと来てしまうということも。

 シリアスにストーリーが展開していく中で、アクセントとして、コメディタッチが含まれているのも、良い起伏になっていると感じました。

 ミステリィとしても、解き明かされていく謎が、よく練られているだけでなく作風とマッチしていて、すんなりと入ってきました。

 幽霊や霊媒と言ったオカルト好きな方であれば、いい刺激になるでしょうし、そうでない人であっても、恋愛要素を含んだ青春ミステリィとしてだけで読んでも、十分に楽しめる逸品です!

 

その他のおすすめレビュー

雨想 奏さんの他のおすすめレビュー55