息遣いは毎回違います。
一律のように見える呼吸も、その時々の体調、体勢、心理状態などで微妙に異なる。
人生もそう。その時々の気持ち、行動、関係性の中で多様に変化していく。
この作品には、変化が描かれています。
この作品には、変わらぬ日常が描かれています。
この作品には、微かだけど鮮やかな、まるで暗がりの蝋燭の火のような……バースデーケーキに立てそうな、ね……幸せが描かれています。
自分に悩んでいる女性は、きっと本作で生き方を見つめ直すでしょう。辛い現実に立ち向かう勇気と、傷つき疲弊した心を癒す薬がもらえるでしょう。
男性は……パートナーの機嫌の取り方を学ぶかな(笑)。でも、こういう時にこういう風に振る舞える男性は、きっと素敵で、人生が豊かだと思いますよ。
ホールケーキが食べたくなったので、このへんで。
これが全く関係ない――例えば、職場の端と端に座っているような間柄だったら――その人がどんなマヌケでも気にならないものではないだろうか。
そんな他人だったら気にならないだろう「忘れっぽさ」を持つ夫との生活に疲れたマキ。
彼女の悩みはひどく『生々しい』。
日々、夫に苦戦させられている女なら(嫁に頭を抱えている男でもいいのだが)、きっとはっとさせられる。
そして、救われる気持ちも同時に味わえると思う。
お互いが夫婦だからこそ、このように考えて、寄り添えるのだと感じるのだけれど、いかがだろうか。
毎日の生活は続いていく、呼吸が止まらない限り。愛しさと悩みも失くらなないのだろう、生きている限り。
主人公のマキはもうすぐ結婚3周年を迎える妻。
でも、記念日というものにこだわりのない夫はホワイトデーを忘れていました。
それをきっかけに、なんだかいろいろ溜まってた小さな不満が沸きだしてきて、それがいつしか不安にすり替わって――
マキは悩みます。
私はなんのために結婚したんだろう?
この不満から不安への心情の流れ、読ませます。
大切な誰かといっしょにいる人は思わずうなずいちゃう“あるある”ですし、現状まだ出逢いがないーって人には未来日記ですし。
でも、それだけじゃ終わりません。
魅せてくれるんです。
リアルなのにロマンティックで、激しく燃え上がったりはしないけどなによりもやさしい「成熟した恋愛の形」を。
短編とは思えないほど厚みのある、大人の恋愛物語。
誰かとの関係に疲れたとき、さらりと読んでいただけるのもおすすめポイントですね。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)
「単なる嘆きの小説だったら、『私なら、こんな不義理はしません!』とか、したり顔して書くつもりでしたが……」「書くなよ!」(笑)
「毎日出勤・帰宅時に、『愛情こそ我が栄誉! ジーク、〇〇(妻の名)!』と叫びますとか?」「いやそれ奥さん逃げ出すからっ!」(笑)
「では一日に何度も、甘ったれた猫のようにとりすがって頬ずりしたり、うっとりとした眼差しで見上げたりしながら、『〇〇様(妻の名)の他にカミ(←おかみさんの意)は無し! 〇〇様は偉大なり!』と唱えますとか?」「もっと問題増えてるだろ!」(笑)
「ならば毎朝、『私は本日も〇〇さんの夫として、愛妻のために奉仕すべき責務を深く自覚し、結婚の誓いを遵守すると共に、家族法及び配偶者の家庭生活上の指示に従い、誠心誠意かつ真摯に婚姻生活を営むべく、全力を尽くすことを固く誓います』と宣誓するとか?」「どんな堅物だよ!」(笑)
「おい、こいつ一体どうしちゃったんだ!?」
「何だかちょっと、色々あったらしいぞ……(憐憫の表情)」(苦笑)
「でもこんな調子いいこと言う奴に限って、いざ実践となったら奥さんの顔も忘れちゃうとか」「さすがにそれはないだろう!」(笑)
「意欲はともかく、客観的な財力とかサービス能力とか人間的魅力とか、その他もろもろ資質の面で……」「こらこら、また落ち込ませるようなこと言っちゃダメだってば!」(笑)