呼吸している

作者 陽澄すずめ(すずひめ)

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★★★ Excellent!!!

ホワイトデーを忘れていた夫。

その、些細な綻びから始まる、妻の物語。

『悪意のない人々にやたらと翻弄されている』という言葉が、
妻が、日常に感じている息苦しさを表している。

彼女の息苦しさは、常識的な枠組みに押し込められている事への苦痛でもあるようだし、それは、彼女自身が、当たり前のように思って居たことすべてのようにも感じて、とても、この悩みが、リアルでした。


 そうだ、ゆっくり行けばいい。
 緩やかに続く道は、きっと日の光に照らされている。


この言葉に、未来への希望が詰まってる。

★★★ Excellent!!!

ちょっぴり抱えたモヤモヤを飲み込んで、それを言葉にするかの葛藤があって、でも結局言わなくて。

きっと人間の日常なんてそんなもの。けれどもそんな世界に絶望しない意味をふわっと気付かせてもらえる、そんなお話。

なにも読みたくない、と思ってる人に読んで欲しいです。切実に。

★★★ Excellent!!!

これが全く関係ない――例えば、職場の端と端に座っているような間柄だったら――その人がどんなマヌケでも気にならないものではないだろうか。
そんな他人だったら気にならないだろう「忘れっぽさ」を持つ夫との生活に疲れたマキ。
彼女の悩みはひどく『生々しい』。
日々、夫に苦戦させられている女なら(嫁に頭を抱えている男でもいいのだが)、きっとはっとさせられる。
そして、救われる気持ちも同時に味わえると思う。
お互いが夫婦だからこそ、このように考えて、寄り添えるのだと感じるのだけれど、いかがだろうか。

毎日の生活は続いていく、呼吸が止まらない限り。愛しさと悩みも失くらなないのだろう、生きている限り。

★★★ Excellent!!!

主人公のマキはもうすぐ結婚3周年を迎える妻。
でも、記念日というものにこだわりのない夫はホワイトデーを忘れていました。
それをきっかけに、なんだかいろいろ溜まってた小さな不満が沸きだしてきて、それがいつしか不安にすり替わって――

マキは悩みます。
私はなんのために結婚したんだろう?

この不満から不安への心情の流れ、読ませます。

大切な誰かといっしょにいる人は思わずうなずいちゃう“あるある”ですし、現状まだ出逢いがないーって人には未来日記ですし。

でも、それだけじゃ終わりません。

魅せてくれるんです。
リアルなのにロマンティックで、激しく燃え上がったりはしないけどなによりもやさしい「成熟した恋愛の形」を。

短編とは思えないほど厚みのある、大人の恋愛物語。
誰かとの関係に疲れたとき、さらりと読んでいただけるのもおすすめポイントですね。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)

★★★ Excellent!!!

朝食をたべてからお仕事にいって、実家で夕飯をとって家にかえる。既婚の女性の、とある一日をつづった物語です。
つい共感してしまうような日常の思いがかさなっていったさきで、不意にあかるく、あたたかな思いに出会えました。
ひとつひとつが役割をもつ文が、しっかりと編まれた文章が、寄りそうようにマキさんの気持ちを体験させてくれます。

「本当はおいしいものなのに、なかなかそれに気づけない。それは今、私が空腹ではないからだ」

何度でも思いだしたい、大切な言葉がつづられていました。

★★ Very Good!!

「単なる嘆きの小説だったら、『私なら、こんな不義理はしません!』とか、したり顔して書くつもりでしたが……」「書くなよ!」(笑)

「毎日出勤・帰宅時に、『愛情こそ我が栄誉! ジーク、〇〇(妻の名)!』と叫びますとか?」「いやそれ奥さん逃げ出すからっ!」(笑)

「では一日に何度も、甘ったれた猫のようにとりすがって頬ずりしたり、うっとりとした眼差しで見上げたりしながら、『〇〇様(妻の名)の他にカミ(←おかみさんの意)は無し! 〇〇様は偉大なり!』と唱えますとか?」「もっと問題増えてるだろ!」(笑)

「ならば毎朝、『私は本日も〇〇さんの夫として、愛妻のために奉仕すべき責務を深く自覚し、結婚の誓いを遵守すると共に、家族法及び配偶者の家庭生活上の指示に従い、誠心誠意かつ真摯に婚姻生活を営むべく、全力を尽くすことを固く誓います』と宣誓するとか?」「どんな堅物だよ!」(笑)

「おい、こいつ一体どうしちゃったんだ!?」
「何だかちょっと、色々あったらしいぞ……(憐憫の表情)」(苦笑)

「でもこんな調子いいこと言う奴に限って、いざ実践となったら奥さんの顔も忘れちゃうとか」「さすがにそれはないだろう!」(笑)
「意欲はともかく、客観的な財力とかサービス能力とか人間的魅力とか、その他もろもろ資質の面で……」「こらこら、また落ち込ませるようなこと言っちゃダメだってば!」(笑)

★★ Very Good!!

 子どもがいないことで怒涛のような日常と戦う必要もない、かといって、いまさら恋人同士のような関係を求めているわけでもない、そんな結論づけにくい気持ちを丁寧に掬いあげた作品です。実際に結婚2〜3年目の人が読めばもちろん琴線に触れることでしょう。くわえて、10年目、20年目の人が読んでも「あぁ、こんな日々もあったかもしれない」と微笑ましくなること請け合いです。
 

★★ Very Good!!

白い日なんてくそくらえじゃッ、そもそもなんでユリウス暦に則って祝わないかんのじゃっ、とキャッチを読んで思った。全然期待しないで本編読んだから不意打ちみたいに涙が出た。

ホワイトな日は関係なかったんだねーー

日常にふと疑問を感じることは誰しもあると思う。でもその日常の大切さを噛み締められることがこんなにも幸せなことだったなんて。15日はきねんびはんたいはがほーるけーきをまるごとくいつぶすひに制定したいと思いました。

★★★ Excellent!!!

こういう柔らかな雰囲気の小説、ほんとにいいなって思います。
洗練された読みやすい文章が、主人公の倦怠や日常への戸惑いを真っ直ぐに伝えてくれます。
こんなはずじゃなかった。
思い描いていた未来はこんのじゃない。
でも・・。
丁寧な描写によってすぐに感情移入でき、ラストシーンがとても印象的です。
素晴らしい短編小説です。

★★ Very Good!!

倦怠の中を漂う文学という印象を受けました。
私は未婚ですので、夫婦の事情に明るいわけではありません。
それでも、他人が同じ屋根の下で暮らす苦労を想像することができました。
私は、常に新鮮さを求め続けるため、結婚ってむつかしそうというある種のハードルの高さも提示してくださいました(笑)。

★★★ Excellent!!!

語り手であるマキの、日々の暮らしの中のいたみとしあわせが、叮嚀で豊かな文章表現によって語られています。特に「蛇口から落ちる水が洗剤の泡を押し流し、排水口に消えていく」の一文の表現と、場面への挿しこみ方は素晴らしく、見習いたいと思いました。
また人物の置き方もとても良かったです。康介とマキ、母と伯母とマキ、会社のマキと家のマキ、それらの配置の仕方が絶妙で、それによってマキの微妙で複雑な心境がとてもよく表現されていると思いました。
最後の康介の台詞に、読んでいる私もじんわりと嬉しさがこみ上げてきました。

Good!

結婚はゴールではない。そこから長い共同生活が始まる。始め新鮮だった二人の日々も、やがて磨耗し、平坦になっていく。
そして思う。なんで結婚したんだろうと。

「男なんて大きな子供と同じ」
その言葉を、強く実感させる作品である。

そしてそれがたまらなく愛しいのだ。