ノスタルジックな90年代

90年代の、それもある特定の期間を舞台に描かれたであろう青春小説。

そう、まさにこれはゲームを通した青春小説なのです。


不良のたまり場であったそれ以前と、小さいゲームセンターは淘汰されより大型店に集約化が進んでいくそれ以後との、わずかな間に存在した、狭く閉じた牧歌的な空間。

そこは活動範囲が狭い学生でも、学校や学区や年齢を超えたオタクのたまり場であり、同時に見知らぬ同好の士と知り合える社交場でした。

現代では消滅したであろう作中に登場する場所は、ある世代にとってはノスタルジーを感じさせる原風景なのです(というかお店の雰囲気や稼働しているゲームなどが、自分がかつて通った空間とあまりにも似すぎていて、作者さんとリアルの知り合いなんじゃないかと思わず疑ったぐらいにリアルすぎです)。

この作品はフィクションです。
だけれど、真実に存在した空間なのです。

だからこそ事実と空想をまじえた物語作りと、展開の巧みさもあって、見事文章に騙されました。
この辺、やり方がうまくて最終話まで気が付きませんでしたよ。皆さんもぜひ騙されてください。
郷愁と温かみを感じる素敵な作品です。

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