すべてを包んで温める炎のような赤い髪の娘と、
翼のない黒龍の刺青を持つ誇り高き黒髪の戦士。
大切な者に死なれ、独りぼっちとなった二人は、
運命に引き合わされ、魂の伴侶として愛し合う。
聖なるもの、魔であるもの、妖へと堕ちたもの、
そして、弱くしたたかで狡猾で愚かな人間達が、
それぞれのさだめを負って、生きて死んでいく。
時としてあまりに容赦のない幻想異郷の群像劇。
赤い髪の治癒師ファランと黒龍の傭兵シグリド、
恋人同士の二人がじっくりと描かれるのは勿論、
脇を固めるキャラクター達がまた魅力的である。
語り部パルヴィーズと養父アスランが好きです。
壮大にして繊細な物語は、歴史のわずか一幕で、
永遠の命を持つ者達の目には儚く映るのだろう。
終わりある命の生き様は悲しくも美しく愛しい。
めぐり旅する魂の物語、堪能させて頂きました。
人や妖魔の、様々な「愛」が絡み合う群像劇。言葉のひとつひとつを噛みしめるようにじっくりと味わいたい作品です。
丁寧に練り上げられた言葉によって紡ぎ出された物語は、華麗で重厚、なのに読みやすい。読み始めると一気にその緻密で美しい世界に引き込まれ、画面を閉じた後もしばらくは、どっしりとした充実感に浸ってしまいます。
傭兵のシグリドと治癒師のファランの恋が軸となって物語は進みますが、彼らは勿論、取り巻くすべての者の人生に、想いに、奥行きがあります。
彼らの人生や、心に抱く想いは、必ずしも幸せに満ちたものではありません。ですが、ダークな世界の中にあるほのかなともしびが、読後、不思議なあたたかさに包んでくれます。
ジャンルは「異世界ファンタジー」となっていますが、甘い「恋愛」作品でもあります。
どちらがお好きな方でも。
心の中に残る、切なく悲しいのに甘くあたたかな余韻を、今でも味わっています。
第1部読了。
やっぱり生粋のファンタジーといえば、僕にとってはテイルズとかデルトラクエストあたり。この作品にはそれに加えて切なさと愛情が織り交ぜてあります。
最近だと「異世界転生ファンタジー」が台頭しているせいか、こういったハイファンタジーは探さないとなかなか見当たらない気がしてます。そういう意味での原点回帰。
何が違うのかと言われると、現代知識を使わないところでしょう。架空の種族、掟、術、言葉などなど、この世界における常識を全てを一から作り上げていく必要があります。そういった世界観がしっかりしているからこそ、安心して読めるのだと思います。覚えるのに時間はかかりますけどね。
シグリドとファランが中心となる物語ですが、この時点で僕個人としては、シエルとディーネの悲恋がとても印象に残りました。というよりこれが第一部のメインポイントでしょう。そしてシグリドの生きざまに大きく影響していく。
シエルかっこいいねん。そして彼を思うディーネの健気さと儚さが最高やねん。そして兄ロスタルも…
その他のキャラの心情もわかりやすく、まさに群像劇。
地の文章も読みやすいです。綺麗と言ってもいい。たまに心の声だなと思うものが突然入ってきたり、視点が変わったりしていますが、そこは群像劇を意識しているからなのでしょう。視点移動はタブーという人もいるらしいですが、同じシーンであっても改行2~3つで視点を切り替えていくやり方は、せわしくあっちこっち移動しなければアリかなと思いました。
決して戦闘メインではないと思いますが、戦闘描写ももう一工夫ほしいかも。
ゲームっぽい異世界ともまた違う、どこか懐かしくファンタジーで重厚なストーリーです。
ネット小説に慣れ親しんでいる方は、ファンタジーというと、ゲーム(ぽい)世界へ転生するやつでしょう? と思われるかもしれない。
でも、本当のファンタジーとは、こういう小説のことをいうんです。(と、私は思う)。
しっかりとした設定に裏打ちされた重厚な世界観。指輪物語やナルニア国物語など、数多の名作が生まれてきた「ファンタジー小説」。この「最果ての、その先に」は、まさにそういった系統の物語です。
今まで、いわゆる異世界転生するファンタジー小説に慣れ親しんで来た方も、試しに一度、読んでみてはいかがでしょうか。たしかに、最初はとっつきにくいかもしれません。頭も使います。ラノベじゃないです。ヘビーです。でも、だからこそ、面白いんです。
軽くない、考え抜かれた文章をかみしめるように読んでいくのは、小説の醍醐味の一つだと思います。こういう小説を読んだことのない方にこそ、おすすめのファンタジー小説です。
第二部が終ったところですがレビューを。
不思議な雰囲気をもつ序章から、一気にファンタジー世界へと引き込まれます。イマジネーション溢れる世界を舞台に、物語は過去と現在を渡り、数々のキャラクターの厚みのあるドラマが展開していきます。
その描写、語り口、キャラクターのどれをとっても素晴らしい。まさにこれぞファンタジーといった、読み応えのある作品になっています。さらにすごいのはこれが読みやすいということ。風景や異形のキャラクターたち、臨場感たっぷりの戦闘シーンが、まるで映像を見ているように読んでいけます。
第二部ではさらにキャラクターたちの魅力が引き出されていき、なんとも飽きのこない構成になっております。
骨太のファンタジーを気軽に読める物語、ちょっと時間を作って読んでみてはいかがでしょう。
描かれているのは、魂《こころ》です。
誰かが、誰かを想う、魂《こころ》の物語です。
カテゴリ的にはハイファンタジーで、シリアスで、長編です。私は好きですが、今のカクヨムでは埋もれやすいかもしれません。
けれど、ローファンタジーでも、アクションでも、ドラマだって、ミステリだって、読んでいて魂《こころ》を揺さぶられる物語は、良いと思いませんか? カテゴリの枠を超えて、登場人物たちのむき出しの魂《こころ》に触れたいと思う人に、是非、読んでいただきたいと思います。
ハイファンタジーの世界観に馴染みのない人は、ひょっとしたら、冒頭で苦手意識を持ってしまわれるかもしれません。
カタカナの名前、地名がでてきたら覚えられない、という人は、別に初めからしっかり覚える必要はないのです。(友人にそう言って、カタカナが出てくると読まない人がいるんです)
少女が、ある人に出会った――それだけ読み取れば充分です。あとは、彼女の感じたことを、彼女と一緒に魂《こころ》で感じていけば、自然とこの物語の世界に入っていけます。
彼女、だけではありません。彼も、彼も……。皆、魅力的な魂《こころ》の持ち主です。
ただし、通勤・通学の電車で、ちょっと読むのには向きません。確実に乗り越します。
ちなみに私は、健康診断の待ち時間に一気読みしました。そして、名前を呼ばれているのに気づきませんでした……。
タイトル通り。
ハイファンタジーとダークファンタジーが融合した世界観は、美しくもあり滲む恐怖がある。
戦いと恋心を描きながら、どこか音も無く忍び寄る悲壮感……
たまらんです。
あとヒロインの直球なけなげさが良かった。こういうストレートな優しさや可愛らしさを表現した作品って最近はあまり見ないな……
そしてこう言う作品に触れる度に思うのが、やっぱり縦読み機能が欲しい。タブレット片手に、一枚一枚ページをめくるように読みたい。
最後は思わず私の希望を書いてしまったけど、昔触れたヒロイックファンタジーの文庫小説を思い出す……そんな素晴らしい作品でした。
面白かったです。また読みに来させて頂きます。
治癒師の少女ファランと美しき妖魔の戦士ロスタルが出会い、そして物語は紡がれていくが……。
特別な術を使えないがゆえに役立たずを意味する『癒しの箱』と揶揄されるファランですが、そのけなげな姿はとっても好印象。『二つ頭』の異名を背負いしシグリドの傷を手当した時点で、“君は役立たずじゃない”と思いましたしね。
ファランとシグリドのなんとももどかしい関係にやきもきされつつ、話を読み進めていくと、シグリド(今のところ主人公よりも目立ってる!?)の回想が始まるのですが、兄シエルを思う彼の男気に惚れてしまいます。
『種族を超えた愛』が主軸の一つになっているからなのか、映画『ヴァンパイア・ハンターD』を思い起こさせるような雰囲気もあり、私は楽しく読めました。
異世界転生ものもいいですが、こういった生粋のハイファンタジーもどうでしょうか、皆さんっ!