懸命に生きようとする男装の美少女

三章の途中まで読んだ時点でのレビューです。

家族を失った十七歳の難民の少女セシル。彼女は、美しい容貌と白銀の髪と瞳が人目をひくことをのぞけば、ごく普通の非力な少女です。
そんなセシルが生活のために、性別を偽り兵士に志願し、紆余曲折を経て騎士団に所属することになります。

「美少女騎士」という単語を目にしたときに、美しい少女が勇ましく騎士に志願し、天才的な才能をもって馬を駆り、槍を振りかざし、かっこよく活躍する物語を想像しました。
しかし、セシルはそうではありません。生活の苦しさから、死を選ぶよりは……と、ギリギリの選択で仕方なく男装し戦いに参加します。手柄をたてることより、生き延びて最低限の報奨金にありつくことが目的です。
屈強な男たちに交じった戦場で、自分の心身の弱さに苦悩するセシルは、とても身近に感じられる、等身大のヒロインです。
出自には彼女も知らない謎がありそうで、今後、それが解き明かされていくのが楽しみです。

そんな彼女をとりまく魅力的なキャラクターたち。
ぶっきらぼうで口は悪いが、なにかと助けてくれる頼れるラクロ。一見やさしげで物腰も至極丁寧だが、内に何か底知れぬものを秘めていそうなテレジオ。
口を開けばつい喧嘩になってしまうセシルとラクロですが、ときにコミカルなそのやり取りは、気が合っている証拠のようでもあり、今後の関係に期待してしまいます。
ラクロとテレジオの関係性にも謎が多くて気になります。

このお話の大きな魅力は「読みやすい」ことです。単純という意味ではありません。
整った文章で、適切な量の情報が提示されるため、頭にスムーズに入っていきます。
例えば街の区画ごとの特色の設定、騎士団の設定など、きっちり考えられているのですが、その複雑さに読者がつまづかないようにうまく説明してくれています。
登場人物、とくにセシルの心理描写も細やかで、感情移入しながら読んでしまいます。
テンポよく進むストーリー。迫力と臨場感のある戦闘描写も大きな魅力です。

異世界ファンタジーが好きで、がんばる女の子が好きな方には、とくにおすすめしたい物語です。

セシル以外の女性キャラも魅力的です。魔術師シルヴィアさんとか……!

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