いわゆる男装騎士ものは、割と見かけますが、『白銀のセシル』は他の作品とは大きく違うということを伝えてから、本文を書きたいと思います。
展開の先読みができない所が面白いです。
次はどっちに行くのだろうと、毎回わくわくしてしまうほど、テンプレからかけ離れた作品です。
次はこっちにいくのか、まさかのそこで?!、と何回驚かされたでしょうか。
多様な物語の展開の仕方に、飽きることはありません。引き出しの多さに感服します。
良い意味で期待を裏切ってくれる作品です。
キャラクターたちも皆魅力的で、世界観をより深く強固なものにしています。
私はシルヴィアを個人的に推してるんですが、主人公のセシルも、ラクロもテレジオもそれぞれ違った個性があります。
誰が誰だか分からなくならないので、スムーズに作品を読むことができます。
キャラクターが生きている、まさにそんな感じです。
地の文は軽すぎず重すぎずといいバランスで、会話文はそれぞれキャラクターの個性が出ていて、読みやすいです。
良いライトノベル、というのはこういうものを言うのだと思います。
読んで損する作品ではありません。
魅力的な作品『白銀のセシル』を読んでみませんか?
自身の境遇を呪いながらも、よくしたいと言う希望あふれる銀の少女は兎にも角にも生きることに逞しかった。
人の世の中では理不尽なルール、不文律、そして蠱惑的な誘いと陰謀。
いい生活を!と望み、自身を男と偽ったその日から、「彼」の運命は動き出す。
生きるために、と言う根幹的で原初的な主人公の行動は筋が通っています。芯の強さを感じます。
嘘をつくことの善悪はさておき。
一旦走り出してしまった嘘からの話は、あれよあれよと「嘘でした」なんて言えない話に大変貌。
嘘とバレるのでは?と言うスリル。
世界観も作り込まれており、固有名詞はやや多め。
時間の経過は比較的ゆっくりなので、丁寧な描写が光ります。
腰を据えて世界観に浸りましょう。
三章の途中まで読んだ時点でのレビューです。
家族を失った十七歳の難民の少女セシル。彼女は、美しい容貌と白銀の髪と瞳が人目をひくことをのぞけば、ごく普通の非力な少女です。
そんなセシルが生活のために、性別を偽り兵士に志願し、紆余曲折を経て騎士団に所属することになります。
「美少女騎士」という単語を目にしたときに、美しい少女が勇ましく騎士に志願し、天才的な才能をもって馬を駆り、槍を振りかざし、かっこよく活躍する物語を想像しました。
しかし、セシルはそうではありません。生活の苦しさから、死を選ぶよりは……と、ギリギリの選択で仕方なく男装し戦いに参加します。手柄をたてることより、生き延びて最低限の報奨金にありつくことが目的です。
屈強な男たちに交じった戦場で、自分の心身の弱さに苦悩するセシルは、とても身近に感じられる、等身大のヒロインです。
出自には彼女も知らない謎がありそうで、今後、それが解き明かされていくのが楽しみです。
そんな彼女をとりまく魅力的なキャラクターたち。
ぶっきらぼうで口は悪いが、なにかと助けてくれる頼れるラクロ。一見やさしげで物腰も至極丁寧だが、内に何か底知れぬものを秘めていそうなテレジオ。
口を開けばつい喧嘩になってしまうセシルとラクロですが、ときにコミカルなそのやり取りは、気が合っている証拠のようでもあり、今後の関係に期待してしまいます。
ラクロとテレジオの関係性にも謎が多くて気になります。
このお話の大きな魅力は「読みやすい」ことです。単純という意味ではありません。
整った文章で、適切な量の情報が提示されるため、頭にスムーズに入っていきます。
例えば街の区画ごとの特色の設定、騎士団の設定など、きっちり考えられているのですが、その複雑さに読者がつまづかないようにうまく説明してくれています。
登場人物、とくにセシルの心理描写も細やかで、感情移入しながら読んでしまいます。
テンポよく進むストーリー。迫力と臨場感のある戦闘描写も大きな魅力です。
異世界ファンタジーが好きで、がんばる女の子が好きな方には、とくにおすすめしたい物語です。
セシル以外の女性キャラも魅力的です。魔術師シルヴィアさんとか……!
この物語、セシルが強く思わなければはいはい売春婦売春婦で終わるんですよ。だってそういうレベルの生活だもの。
でもセシルは強く思ったんです、そういうモノよりも、男であっても、違う道で活きたいと。
そこから世界は、灰色から、打って変わって色が付いていきます。私は淡い単色からだんだん虹に見えてきたかな。加わっていくんですよね。そう、加わるのです。
この色が合うかどうかは読者さんの好みです。
文体とかの説明。
完全なハイ・ファンタジーです。なんちゃら転生なんちゃら令嬢なんちゃらMMOにゲーム系など、大量にある流行り物に疲れたそこの貴方、これを読んでリフレッシュというのはいかがでしょうか。
残酷なところは残酷に、かっこよくするところではかっこよくという、出来そうで出来ない描写をさくっと書いていて本当素敵です。
後半男性陣がちょっとナヨナヨしているかなーという感じはしますけれども、筆者が優しいのでそうなるんでしょう、きっと。
数年かけて書いているので伏線とかの回収は完璧です、序盤のちょっとした設定をしっかりと後半まで持っていって書いてます。
素敵な作品です。