◆12
「今夜内……ですか?」
無理を言うところは今に始まった事ではないが、それにしても今回ばかりは難易度が高すぎる。
「出来るでしょ? ご自慢のオトモダチに手伝ってもらえば」
オトモダチとは、城の裏手にある山にいる狼達の事だ。
ウルがとおぼえ呼びかければ、すぐにでも集まってくれるだろう。
「いいこと、殺す事は許しても、あんたが死ぬ事は決して許さないわよ」
物騒な言葉に少し面食らう。
「殺しませんし、死にませんよ」
言いながら、ポフっとルチルの顔に獣の手を乗せる。
「今から寝るのはいいんですけど、夜は早めにご就寝して下さいね。私は自分で自分の信頼を取り戻さなければならないみたいなので。しかも、今夜内に」
言いながら、空いた手で上掛けを被せた。
途端にルチルは大人しくなり、もぞもぞと寝る体勢に入る。
すると、中から白い手がするりと出て来た。
手は迷いもなくウルの首周りの毛を捕らえる。
そこはウルの身体の中で最も毛の厚い部分で、ルチルのお気に入りだった。
ウルの首周りに手をうずくめる事は、彼女の寝入る為の儀式でもあるのだ。
「あー、もふもふ……」
顔は見えないが、声は普段の彼女からは想像もつかないあどけないもので、相当眠たかったのだな、と分かる。
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