「ロボット検死解剖官」これだけで勝ち。無限に物語が生まれる予感がする。

 アシモフが死んでもう、20年以上が経っていると言うのに、俺たちはいまだにアシモフに(ある意味では)縛られ、その輝きの片鱗をなんとか拾い集めて、そうやって暮らしている。

 アシモフの何が凄いか、なんて話はもう、数万人がそれぞれの言葉で述べているし、今更言うことではないけれど、その凄みの一つは新たな学問体系を築き上げたことである。

 ロボット心理学者、スーザン・カルヴィン。
 心理歴史学者、ハリ・セルダン。

 ひとつの新しい学問が切り開かれれば、そこには付随するたくさんの物語が生まれる。

 ひとこと紹介に書いたように、「ロボット検死解剖官」という発明は、この学問体系の構築に比類ない大発明だと思う。惜しみない称賛を贈りたい。
 もちろんアシモフのロボットシリーズには、ほとんど「ロボット検死」に近い作品群も存在するけれど、それを担う人物は時には航宙士であり、ロボット心理学者であり、メカニックであった。それに専属の職業を作成したこと、確かにその職業が存在してもおかしくないこと、そして、その職業には、ロボットへの愛があること。どれも素晴らしい。

 もちろん設定だけが素晴らしい訳ではなく、文章も読みやすく、あとマリアも健気かわいいので、その点も問題ない。

 24万字の長さをまったく感じず、日々更新を追いかけてきた俺が言うのだから、間違いない。お疲れ様でした。



 ところで、ドクター・シュルツの博士時代とかの、もう少しドライな、SFミステリスピンオフがあったら、俺は宙返りだって決めてみせるというくらい、それも少し、期待している(勝手に)。



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