それは『仮想箱』の世界で少なからず無理をしたあなたの、修復と再定義の物語。
あなたはそこで、自分と同じ方向を向いて、同じ定義で共に歩ける存在としてナツ――渡良瀬夏と初めて出会う。
その世界は解釈なしでは歩けぬ空。他者のIFが幾重にも交わる場所。
故に、あなたがその場所で再び取り戻した自己は、もう一度世界を歩み、もう一度物語を渡るだけの強度になる。
だから未来でも過去でもいいのかもしれない。どこかのタイミングで、もし思い出せないとしても、二人でその場所を歩いたことがきっとあなたの魂を支える。
――『イデアの海』
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ご無沙汰しております。亀のような歩みになってしまっていますが何とか歩き続けております。
前のノートは一年以上も前。目が細くなります。
さて先日、島流しにされた男爵イモ様の企画にて『仮想箱_synonym』をお読みいただいて、有難い評価をいただきました。
https://kakuyomu.jp/user_events/16817330666297506235
そこで企画者様の“読み解き”に対して私なりの世界観(設定)を、しかも頭の中にしかない構想中の裏側も含めてお伝えする機会がありまして。
それはもうスラスラと「これはこういうことで、こう繋がっているのです」が出てきて自分でも驚くほどでした。
仮想箱シリーズは指摘いただいた構成の欠点を補強する妙案を以て、もう一度添削して、最後に公募に出してみようかと思うほどに、私は自分で書いたこの物語が好きだったのです。
そう、物語。書くのを止めてしまった別の作品に対して「オリジナリティを出すには固有名詞やその設定で魅せることの他に、確たる物語を構築することも重要だ」ともアドバイスをいただいたのですが、改めて『イデアの海』に向き直り、冒頭の一節に繋がります。気付いていなかっただけでこの作品には最初から朧げに物語が在りました。こうして文字にして、もう少し強固にしておきましょう。どれだけ時間がかかっても、私以外の標が無くとも、その海を歩けるように。