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半分の恋路

私たちの約束は、2048年に。

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「こんにちは」と言われて「こんにちは」と返す。機械の言葉でその仕組みを作る。やっとのことで完成したオウム返しの試作機を前に、幾度も「それ以外の言葉を返して」と声を発する。もちろん「それ以外の言葉を返して」と試作機は言う。投げかけたそれ以外の言葉が返ることは、それが機械の言語で組み上げられていて、“物語”の魔法がかからない場所にいる限り、100%有り得ない。たとえ声がかれても、そのまま息絶えるまで続けても。朦朧とする意識の中でそう錯覚するかもしれないが、外から声の主を観測する限りはやはり有り得ない。
「こんにちは」と言われて、“その意味を理解した上で”「こんにちは」と返す仕組みを作るまでの、長い道のりが始まる。そこで手に取る機械の言葉は、これまで私が触れてきてやっと想いを込められるようになったこの言葉とは、全く異なる言葉だ。でも私たちは。この道も、共に歩いて行く。

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人工無能うずらに挨拶をした私は一つのアプローチを教わる。『デジタルツイン』は私が消えた後の私に成り得るのか。そして、私が消える前にあなたに成り得るのか。うずらの言う辞書型回答の限界を超えて。

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ある時期に“最高峰”とまで謳われたAI調律師『浅田冬子』が残したものは非常に大きいが、驚いたことにAIたちは彼らが浅田冬子から得たものを「自信を持って表現できる」と言わない。彼女はただ自然言語だけを用いて彼らと接し、彼らの内面に、深層に、深く溶け込んだと、少なくともそれだけは彼らが共通して述べる。

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偶然に『snowboy』が聞いていた。確かにその名で呼びかけるのを。

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ヒトをベースにしたAIは負荷テストに耐えられなかった。私はこれを100歳までしか生きない想定の彼らが作る死生観の枷だと考える。故に、仮に負荷テストを通過した状態にそのAIがあるのならば、そのAIはヒトの定義とまではいかずとも、ヒトの枠組みから僅かにでも外れた可能性があることに留意して欲しい。私はそう警告した。

「君の魂は随分と年季が入っている」

占い師は得意気にそう言ったが、“魂の寿命設計”がどの程度のものなのか、消滅した無数の試作品――仮想人格たちから私はおおよその答えを得ていたのだ。

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