タイトルは 『深海魚』/折井理子 より
まずは物語になれなかった欠片たちへの手向け。内なる宇宙の青い塵に溶けて、またいつか。
・夏が燻る
我らが文芸部の部長、一見奇想天外なようでしかし洞察に満ちたその“宿題”。夏休みを取り返すために少年の放り込まれた大舞台を何段跳びで駆け抜けよう。私はこれの提出が間に合わなかった。文芸部は滅びないし“かえりみる”ことのできるもの。どこかの夏でまた会いましょう。
・砂漠渡りと長月
影月、長月、そして王日の巡る砂漠。フレッド、アシュリー、それからレンチにスパナ。円塔の跡であなたたちが眠る短い時間に、私はフレッド手製の本に書き込むことが出来なかった。どこかの砂漠でまた会いましょう。
・12時発、1時着。
「『24:00』と『00:00』が重なるから、ほんの少しだけ“重い”」
終末後の駅の時計は『1時』で止まっていた。一つ前の駅は確かに『24:00』と『00:00』が重なった時間だった。朽ちた駅と駅の間の途方のもない距離を足を棒にして歩く傍らで、古き時間の詠み唄を紐解いていく。私は形を失った急行電車の代わりを見つけられなかった。もしこの文脈をあなたが読み解くことがあるのならば、その駅のベンチでまた会いましょう。
・年明けこそ鬼笑う
天晴れ、紛うことなき現世の鬼。叩き割りしは大団円、皆忘れしは汝の姿。某はその大役を務められなかった。然らば某も潔く忘れよう。……忘れん。