もし、自分の小説を一つだけ、残り寿命の半分を誰にも明かすことなく温め続けることを条件に書籍化してもらえるとしたら、どういった内容にしたいか。
平均寿命を80歳だとして、現在20歳なら30年間、50歳でも15年間温めることになる。
これには色々な課題がある。
流行なんて当てにならないし、自分の価値観だって変わっているだろう。
何よりそれだけ温めるに値するだけの価値を持っているのか……待つくらいならいち早く出すべきだという点もある。
即座にコレだと言い張れるものがあるなら、凄いなと思う。
私には勿論、そんな作品はない。
ないが、仮に挙げるとするなら、ジャンルやあらすじはともかく、読者に「答え」ではなく、「問い」を与える作品になるだろうと思っている。
一流の答えを導くことは無理だろうが、一流の問いを残すことはまだチャンスがある。
なぜ生きているのか、どこから来てどこへゆくとか、そういうのはどうでもいい。
感受性豊かな子供なら数分で思いつくだろうし、センチでエモな曲の歌詞にでも任せればいい。
むしろ、等身大のみみっちいもののはずなのだ。AIボットが得意な「人それぞれ」相対論でどうにもならない、無駄に複雑な上に応用がきかない難儀な場所に眠っているのではと踏んでいる。