花に水を与えなければ、やがて枯れてしまう。
そんなことは誰もが分かっているし、当然とも思っている。
だが、それと同じことが
人においてはなぜだか疎かになる。
すっかり枯れきった時、それを心底不思議がるのはなぜだろう。
水を欲してやまないのは花も人も同じことなのに。
幾つか枯らしてこう思う。
花は常にこちらを向いてくれる。
だが人はこちらを向いてくれるとは限らない。
花は与える水を選り好みしたりしないが、
人は塩素の入った水なんて飲みたがらない。
花は美しいものの象徴で。
人は醜いと相場が決まっている。
片方しか与えられぬのなら、美しい方に与えてやりたい。
悲しいのは、
そんな気持ちを知りながら、なおも人と水とを求めること。
繰り返しの果てに私は
自らの中に人をつくり
自らの唾液をのむすべを覚えた。