心の底から推したい作品を見つけたとして、どんなに気合を入れたレビューを書いてもすぐに流れてしまう。ならどうする?近況ノートだ!
というわけで★やPVの少ない作品に絞り、僕が気に入った作品を近況ノートで紹介する「隠れ名作を見つけた」のコーナー第二弾です。なおコーナーとか言ってますが別に慣習化するつもりはないのでこれで終わる可能性も大いにあります。ついでに今回紹介する作品は僕が見つけたんじゃなくて、「純粋脂肪批判」(
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881038781 )につけたレビューから知り合った雅島貢さんにTwitterで教えて貰いました。「純粋脂肪批判」も面白いので是非読んでください。(ダイレクトマーケティング)
さて、今回紹介いたしますはカスイ漁池さん著の「感染性バスジャック症候群」です。
カスイ漁池著 「感染性バスジャック症候群」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881977185 ジャンルはクライムコメディとかになるのでしょうか。ただしクライムという言葉から連想するおどろおどろしい感じは一切ありません。作品のドタバタ感から受ける印象は、僕の感覚では三谷幸喜のコメディ映画から受けるそれに近いです。あらすじの主だった部分を作品の紹介ページから抜粋します。
『そして、仙台発秋田行き高速バスは定刻通り発車する。乗り込んでいるのは――銀行強盗、爆弾魔、魔法使いの男女、霊媒体質者、幽霊、超人のカップル。各々の荷物と奇妙な因果を乗せてバスは東北自動車道へと進んでいく。最初のバスジャックが起きたのはインターチェンジを通り過ぎて間もなくのことだった』
ね、面白そうでしょ?
バスに乗り込んだ奇抜すぎる面々も惹かれますが、「最初の」バスジャックという謎ワードも見逃せません。どういうことなの……と思った方は読んで下さい。そこに答えがあります。
あらすじからも分かる通り、仙台発秋田行き高速バスだの東北自動車道だのを舞台にしておきながら話に現実感はありません。登場人物も一癖も二癖もある人物ばかりで、常識人と呼べる人間は少なくとも僕の基準では一人もいません。なのに全てのキャラクターが現実にいるように生き生きとしていて、いつの間にか全てのキャラクターを好きになっている。その筆致の巧みさは素晴らしいの一言に尽きます。
一度加速に乗ってしまえば後はグイグイ引っ張られます。僕は約10万文字、ノンストップで一気読みしました。皆様もこの興奮と熱狂に満ちたバスジャック、体験されてはいかがでしょうか。忘れられない、忘れたくない旅が、そこには待っていると思います。
なお前回の隠れ名作紹介コーナーでも申し上げましたが、個人の感性の問題なので、読んだけど面白くなかったぞ的な苦情は受け付けません。ご了承下さいまし
(追記)
同作者さんの「じゃんけんに熱狂する村」も大変に面白かったのでオススメさせて頂きます。
カスイ漁池著 「じゃんけんに熱狂する村」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880764355 六つの掌編が一つに収束する。それを繰り返す全く新しいショートショート集です。恐るべきセンスで書かれるバリエーション豊かな掌編たちと大胆で見事な伏線回収の綾をご堪能下さい。