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『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』朗読劇化のお知らせ&レビュ返

 どうも。バスケ部エースの人気者高3ゲイ男子がSNSにアップしたカミングアウトが巻き起こす波紋とカミングアウトした当事者の葛藤を書いた小説『#塚森裕太がログアウトしたら』が発売されたばかりの浅原です。

 いきなり宣伝から入らせてもらいましたが、今回はこのために近況ノートを更新したわけではありません。ただ近況ノートを更新すると決めた際、カクヨムのフォロワーに新刊の情報を伝えていないことに気づき報告した次第です。KADOKAWAの本ではないのでURL貼ったりはしませんが、ぜひよろしくお願いいたします。

 では本題は何かというと、もうタイトルでほぼ全て語っていますがこちらになります。

 https://readpia.jp/event/roudoku_kanohomo/

 というわけでカノホモこと『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』、朗読劇化します。漫画化や映像化はよく聞きますが朗読劇化はかなりレアなのではないでしょうか。いや、漫画化や映像化もレアですけど、それ以上にレア。少なくとも僕は「朗読劇化したウェブ小説って何がある?」と聞かれてパッと出てくる作品はありません。

 さて、まずはこの朗読劇化に対する僕の所感ですが、素直に嬉しいです

 特に朗読劇は漫画やドラマより文章と密接しているので「読んだ時の印象」を高く評価された感覚があります。それが嬉しい。印象に残るフレーズって作り物っぽさを生む要因にもなってしまうので良し悪しではあるんですけど、カノホモについては生々しい感情とのバランスを上手くとり、あまり白けることなく伝えられたんじゃないかと。

 それでせっかくなので今回はカノホモの台詞、特に「あまり注目されていない台詞」について語っていきたいと思います。要するに「世界を簡単にするな」とかは省きますということ。とはいえコアすぎるところ攻めてもつまらないので、かなり重要なのに埋もれてしまっている(と感じる)ものを三つ、チョイスしたいと思います。もちろんネタバレ全開になりますので、未読の方は読んでから来てください。

 では、どうぞ

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①『自分だけは、自分を簡単にしても許される』
 Track1でファーレンハイトが放った台詞(チャット)です。物語的にかなり大事なフレーズなのですが、その近傍にある『人間は、自分が理解できるように世界を簡単にしてしまうものなのさ』の陰に隠れてしまい、あまり表に出てきません。記憶にある限りではここ好きだって言われたの2回かな。ドラマでも当然のようにカットされました。切ない。

 ただ、これがないとTrack6のアレに繋がらない。問題が解けないまま死んでしまう。この作品、非当事者には「なるべく世界を簡単にしないで欲しい」と語りつつ、当事者には「もっと自分を簡単にしてもいい」と語りかける二面性を持っていて、自分的には後者の方が大事だと思っているぐらいなんですよね。だから最後の最後にケイトさんがsimpleという言葉を使って総括するんですけど、いかんせん世の中には非当事者が多いので前者がフューチャーされがちという。いい機会なのでここで推しておきましょう。あまり考えすぎるのも良くないよという話として受け取っておいて下さい。

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②「別にホモが嫌いってわけじゃねえけど」
 Track4の近藤さんの台詞です。いわゆる大衆のメタファー的な存在である近藤さんがこの言葉を口にするのは重要な意味があり、彼が読み手にとって遠い存在ではないということをアピールしています。「こいつは特別な悪いやつ」となってしまうと本質からどんどんずれていくわけですね。分かりやすくヘイトを集める役だからこそ、境目を曖昧にしておく必要がある。

 ただ、注目されません。理由は簡単でそもそも近藤さんがそんなに重要なキャラではないから。例えばカノホモのスピンオフ短編を一本だけ書くとして近藤さんの話をリクエストする人いないでしょ。いや、続編を書いてる時にツイッターで近藤さん出して欲しいと言われてビックリした経験があるので一人ぐらいはいるかもしれませんけど(なので登場予定なかったのに無理やり出した)、絶対に多くはない。あとは、世間的には大衆のメタファーは小野だと思われている節があるからですかね。個人的にはあんな極端なやつを「大衆」の位置に据えるのは無理がある気がしますが……

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③「僕はもうしばらく、地球で生きるよ」
 Track8の純くんの台詞です。純くんは基本的に流され体質なのでかなり追い詰められないと「頑張る」とか「やる」とか言わないのですが、そんな純くんが「生きる」と明言した貴重で重要なシーンになります。ここで言われている「地球」の意味を考えるとさらに重要。男性同性愛者の楽園として定義されている「BL星」の対になっている言葉ですからね。傷つくこともあるかもしれないけれどちゃんと現実をやっていくよという、ほとんど物語の結論と言ってもいいような発言です。

 なのに注目されないのは……正直よく分かりません。たぶん本編で「ゲイとBL」について深く触れていないからかな。表面を撫でるだけで終わっている。ゲイから見たBL星の優しさ、そしてある種の都合の良さを認識していないと「地球で生きる」の重みが伝わらないから映えないんですよね。ただ、その辺は本編でも全く語っていないわけではないですし、重みが伝わった人にはかなり印象深い台詞だったのではないかと思います。

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 以上三つ、チョイスして語ってみました。良かったら皆さんもカノホモの好きな台詞とかフレーズとか教えてください。教えてくれると僕のテンションが上がります。やったね。

 なお朗読劇でこの辺の台詞が出るのかカットされるのかは分かりません。近藤さんとか存在ごと消えても全くおかしくないし。まあ何にせよどういう雰囲気になるのか、楽しみに待ちたいと思います。

 最後に。冒頭で宣伝した新刊『#塚森裕太がログアウトしたら』、よろしくお願いします。Amazon覗けば分かりますがあの三浦しをん先生に推薦文書いてもらっちゃったりしてます。めっちゃURL貼りたい。ぜひぜひ。

-----(『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』へのレビュ返)-----

 @hihihiyo 様
 お読みいただきありがとうございました。読みやすさは意識したので、そういって頂けると光栄です。ある程度分別がつく年齢の子どもなら読んで貰ったらいい影響があるかもしれませんね。早すぎると変な方向に歪みそうだけど……

3件のコメント

  • まず、カノホモ朗読劇化おめでとうございます。朗読劇楽しみにしています
    ①」の『自分だけは、自分を簡単にしても許される』という台詞は、自分はかなり印象に残っています。たしかに「世界を簡単にしてしまう」という方が何回か出てくることもあってか有名ですが、①の台詞のおかげで少し気が楽になりました。
    もっと他にもあるかもしれませんが、Track3のミスター・ファーレンハイトがチャットで言っていた、『ジュン。そろそろ僕は夕飯だ。おいとまとするよ』が個人的に好きです。こう言ってチャットを終わりにするのがカッコいいと思いました。「おいとま」なんて使うのがいいですね。
  • おめでとうございます!朗読劇ですか、面白いですね!

    一番好きな台詞は、
    「僕自身が一番、期待しながら生きて来たんだ。」
    ですね。
    この純君の独白のシーンは何度読んでもうるうるきてしまいます。
    ご紹介していた物やよく取り上げられているようなプラスな台詞ではないのですが、この台詞が私にはとても心に響きます。
    本当に心からの叫びを純君が口にしているシーンだからかもしれません。
    その後のお母さんに抱きしめられる所も含めて、好きなシーンです。
  • >純 様

    ①の台詞はそのために書いているので、気が楽になったなら良かったです。何事もバランス。「おいとま」は完全に気取ってますね。色々と彼らしい台詞だと思います。コメントありがとうございました。

    >ぽち 様

    そこは僕も好きですね。あとその独白の前の「とっくの昔に僕が検討して廃棄した仮説」という地の文も好き。もうそれはやってるのよね……。コメントありがとうございました。
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