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『続・彼女が好きなものはホモであって僕ではない』あとがき&レビュ返

 去年から書いていた『続・彼女が好きなものはホモであって僕ではない』が完結しました。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054890098530

 以前、近況ノート(https://kakuyomu.jp/users/Mark_UN/news/1177354054890098900 )に続編を書くまでの経緯を書いた時、「後日談の話もドラマ化決定するずっと前から頭の中にはありました」と言及しており、実際その通りなのですが、この分量になるのは想定外でした。各話三万文字でTrack4が長くなったとしても十四万字ぐらいと読んでいたんですよね。ちなみに結果は二十四万字で、本編は十五万字です。おかしい。

 まあそんな感じで予定外のことが色々ありましたが、終わったことは終わったのでいつものようにあとがきを書きたいと思います。作品の内容に多少触れますので、未読の方はブラウザバックして下さい。世の中には「あとがきから読む」という人も結構いるようですが。

 短編集なのでTrackごとに語っていく形にします。では、どうぞ。

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<Track1:『Is This The World We Created…?』>

 これだけLGBTがどうこうと言われている中でもあまり話題に上がっているのを見たことがないのですが、世の中には「オープンゲイが隠れゲイを不可視化する」という現象があります。

 要するに本編で三浦さんが語った「クラスにもう一人ぐらいいてもおかしくない」という発想が出てこないということです。全く見えていない時は「どこかにいるかも」が頭によぎっても、一部が見えていると見えているものが強すぎて見えてないものに意識がいかない。例えば、新宿二丁目はよく「多様性の街」とか呼ばれていますよね。でも例えばゲイなら、ゲイバーに足を踏み入れた瞬間にゲイになるわけではなく、和民や魚民やさくら水産にいる時だって変わりなくゲイなわけです。世界が多様であることはただの前提だからその辺の居酒屋だってもちろん多様なのに、ゲイタウンがそれを可視化しているせいでそこだけを「多様性の街」と捉えて、無意識に不可視な方の多様性を切り捨ててしまう。そういうことが当事者・非当事者を問わずによく起こります。

 で、続きを書くならどうするか考えた時、真っ先に出て来たのがその「オープンゲイによって不可視化される隠れゲイ」でした。これ、不可視化されているので創作の題材になりにくいんですよね。なので面白いものが書けるんじゃないかと。結果、オープンゲイになった純くんが周囲に受け入れられる一方、その純くんに複雑な感情を抱える明良というキャラクターが生まれました。そして物語を回す役として直哉や姉ちゃんが生まれ、純くんに侵食される日常の象徴として秀則と史人が生まれといった感じです。

 余談ですが秀則と史人、初期構想では本当に「日常の象徴」でしかなくて、つまりモブでした。それが書き始めたら名前がついて、キャラクター性がついて……と伸びていきました。創作の醍醐味ですね。そういうことしてるから字数がかさむんだけど。
 
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<Track2:『Fat Bottomed Girls』>

 確かに主人公は大阪に行ったけど、本編の大半のキャラは東京にいるわけで、そっち側を書かないわけにはいかないだろうみたいな発想から生まれた話だった記憶があります。Track1は新編でTrcak2が続編みたいなイメージ。なので「本編キャラをどうやって出すか」というところから話の展開を考えていたりしますね。マコトさんが一番苦労した。

 視点人物を三浦さんにすること、三浦さんがBLを楽しめなくなること、厄介な後輩に絡まれて騒動が起きることはすぐに決まりました。そして執筆中、想像以上に純くんに未練を残している三浦さんを発見し、過去からの脱却という軸が話に加わりました。本編で純くんと三浦さんが「別れる」シーンって二回あるんですけど、どっちも言い出したのは三浦さんで、純くんはそれを受ける形なんですよね。無理して別れ切り出してるのに当の相手からはノーケア。そりゃ未練も残るわ。

 なおこのTrackの重要人物である暴走ガールの莉緒ちゃん、自分は「暴走させすぎたかな」と思っていたのですが事実は小説よりも奇なのか謎のリアリティが出ていたらしく、自分の体験と重ねて恐怖を覚えている人が続出し、申し訳ないけれどめっちゃ笑いました。自分はこの子いいキャラしてると思っているので(サブに回ると味が出ると思う)、根は悪い子ではないのにそう言ったところをあまり出せなかったのは心残りですね。三浦さんと姐さんと莉緒ちゃんでコミケに行く話とか書けばいいのかもしれない。

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<Track3:『We Are the Champions』>

 この話の出発点は東京組と大阪組の合流。合流させて何やらせるのが面白いかと考えた結果、勘違いコメディに落ち着きました。

 このTrackは舞台をBL星にかなり寄せていて、ここまで本編含めて同性愛ゆえの苦悩みたいな要素がどこかに入っていたけれど、この話はそれを意図的に無視しています。男を巡って男と男が争うのはBLあるあるですよね。まあ自分は同性愛を「好きになった相手が同性なだけ」とは思っていないのですが、究極的にはそれが理想だし、そもそも創作なんてファンタジーで別にええやろということで書いてみました。ちなみに書いた感想としては普通に楽しかったです。

 なお、このTrackはかなり行き当たりばったりで書いており、Track2が終わるギリギリまで大阪ではなく京都を舞台にする予定でした。マラソンは鴨川だったし、観覧車のゴンドラ分けはホテルの部屋分けだった。それが大阪になって、どこに行くかを決めながら書き進めて行ったので、自分も一緒に旅行している感覚がありましたね。そのうち実際に辿ってみたいところ。

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<Track--:『Too Much Love Will Kill You』>

 コンセプトは言わずもがな「ファーレンハイトの物語」。続編を書くと決めた時からこの話は書くと決めていて、タイトルに「続」と銘打っておきながらキャッチコピーに「続編」ではなく「番外編」と書いたのはそのためです。あと作品紹介に「ウェブ版とも齟齬が出る可能性はあります」と書いてあるのもそう。書籍版はファーレンハイト周りの設定がだいぶ変わっているので齟齬が出るのは分かっていたのですが、「ファーレンハイトの話をやる予定です」とネタバレするわけにも行かず、あのような表現になりました。

 今回のTrackでは断トツで書くのに苦労しました。終わった今でも「もうちょっとやれたんじゃないか?」感があります。全体的にキャラが安定しなかった。やっぱ九万字規模の話になると手なりで書かずにもっと詰めておかないとダメですね。そもそも九万字になると思っていなかったのですが。

 ちなみにこの話、書き始める直前まで細川さんをトランスジェンダーの女の子(つまり見た目は男の子)にするかどうか悩みました。なよなよしているせいでイジメられているところをファーレンハイトが助けて仲良くなり……という流れ。断念した一番の理由は本編でファーレンハイトが「純くん以外の同性愛者に会ったことがない」と明言しているからです。同性愛者とトランスジェンダーは違いますが、それでもあの言葉は出てこないだろうと考えて止めました。惜しかったかなと思う反面、細川さんをトランスジェンダーにすると「異性愛を押し付ける周囲」が書けないので、止めて正解だったような気もします。

 あとツイッターの方で述べた裏設定をこっちでも話すと、ファーレンハイトが最期の最期に「あの場面」に登場する流れは本編を書いている時から頭にありました。気になる方は是非、本編の最後の一行を読んでみてください。

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<Bonus Track:『Seven Seas of Rhye』>

 冒頭で後日談の話はずっと頭の中にあったとありましたが、この話はありませんでした。つまり「アレ」で終わりだったということ。しかしそれはさすがに後味最悪なのでどうにかならんかと言うことで出て来たのがこのBonus Trackになります。

 副題の「六人」「一人」はそれぞれ「純くん、三浦さん、明良、直哉、亮平、小野」「ファーレンハイト」を指しており、章題の『Seven Seas of Rhye』(邦題:輝ける七つの海)にかかっています。四天王とか七武海とか護廷十三隊みたいな「数字でくくられた集団」が好きなのでくくってみました。どれぐらい好きかというと、ストーリーとは全く関係ないのに七という数字から七つの大罪を連想し、それぞれどのキャラが当てはまるか考えたぐらい好きです。ちなみに

傲慢:ファーレンハイト
強欲:純くん
嫉妬:明良
憤怒:小野っち
色欲:三浦さん
暴食:亮平
怠惰:直哉

だと思いました。繰り返しますがストーリーとは全く関係ないです。好きなだけ。こういうの書きたい願望はカグヤナイツでちょっと発散しました。

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 以上、Trackごとのあとがきでした。全体としては本編が綺麗に終わっているので(含みを持たせているけれどその不確定性を含めて綺麗)、蛇足にならないかと不安な面もあったのですが、とりあえず概ね好評のようで書いて良かったなと思います。

 それでカノホモのこの先ですが、今度こそ本当に何も考えていません。大阪組の登場により世界観は広がったので単発エピソード自体は簡単に作れそうなのですが、逆に軸を作るのが難しく感じる。純くんと明良が友達以上恋人未満な状態ならまた違うんでしょうけどね。『君に届け』が君に届くまで10巻使った理由が分かる。

 とはいえ、この世界観でもう何も書かないということはないと思います。「続々」になるか単発エピソードになるかは分かりませんが何かは書くでしょう。とりあえず一つこれは書こうと思っている話があるので、おそらくそれは形になるはずです。今はオフラインで進めている作業も結構あるので、いつになるかは分かりませんが、気長にお待ちください。

 最後に、お読みいただきありがとうございました。今後ともカノホモと浅原ナオトをよろしくお願いいたします。

-----(『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』へのレビュ返)-----

 土日黒 様

 軽い気持ちで読み始めて欲しいと思ってこのタイトルにしているので、上手くいったようで嬉しいです。こちらこそお読みいただきありがとうございました。

 氷堂司 様

 知識に傾倒しないことは意識しました。情報を情報として読んでも心に伝わらないですからね。書籍版だとさらに削ったりしています。こちらこそ素敵なレビュー、ありがとうございました。

 熊川シロ 様

 当事者というか、色々と感想を見るに「何かしらのマイノリティ要素」を抱えている人間には特に刺さるみたいですね。そういう強度の作品を創れたことを嬉しく思います。お読みいただきありがとうございました。

 源 新♀ 様

 テンポと展開は自分でもかなり上手く行ったと思います。読んだ人間の世界を多少なりとも変えられる作品になっていたと感じて頂けたのであれば光栄です。お読みいただきありがとうございました。

 濫觴 様

 名前が難しい……なんて読むんだろう。他人に勧めたいと思える作品に仕上がっていたなら嬉しいですね。お読みいただきありがとうございました。

 @nicho_lovinsun 様

 逆に高校生だからという部分もあると思う。まあ爽やかに終わったので許して下さい。お読みいただきありがとうございました。

 読専Å 様

 文芸とライトノベルの中間がライト文芸だとすると、文芸とライト文芸のさらに中間あたりに位置している感じなんじゃないかなと個人的には思っています。面白くサクッと読めてなおかつ考えさせられるいう作品は自分の理想なので、実現できていて良かったです。お読みいただきありがとうございました。

 時織拓未 様

 コロナ騒ぎで可視化された感がありますが、やっぱり「家族」は繋がりとして強いですね。二丁目は逆に行ってない人の方が柔軟な発想ができるんじゃないかと最近は思い始めています。このあとがきでも述べていますけど、可視化されている存在を見るとイメージがそれで固定されるので……。お読みいただきありがとうございました。


-----(『続・彼女が好きなものはホモであって僕ではない』へのレビュ返)-----

 純 様

 書籍からだと気づかない人は気づかないからね……まあしょうがないんだけど。コメントを見るに最後まで追って頂いたようで、書籍購入やレビューも合わせて、応援ありがとうございました。

 鶺鴒 優雨凛 様

 追いかけて頂き、またレビューまで頂きありがとうございます。最後まで読んで貰えたかしら……

 片山へちま 様

 多視点切り替えの群像劇ならではの良さが出ていたなら何よりです。書いてる方も楽しかった。お読みいただきありがとうございました。

-----(『小笠原先輩は余命半年』へのレビュ返)-----

 岩井喬 様

 久々にレビュー貰った。ありがとうございます。小笠原先輩のギャップは自分でも好きです。

-----(『御徒町カグヤナイツ』へのレビュ返)-----

  @ntskn 様

 スタンド・バイ・ミーは青春冒険ものの「いいところ」が濃縮されてますよね。それと被せて貰えるのは光栄です。お読みいただきありがとうございました。

2件のコメント

  • ドラマ再放送→書籍→続カノホモ と拝読しました。細川さんが会ったことのない、兄ちゃんのお墓を守っていてくれて、ホロっとしました。カノホモから気になってた小野くんについて、幕間でやった!と思いましたが、まだ納得ゆきません。掘り下げてもらいたいです。本当は純くんより闇かなと。途中名前しか知らなかった俳優さんが亡くなられて…彼の真摯な生き方を知った後、なんとなく色々シンクロされて、だから終章が『たびー』と元気に終わってよかったです。小野くん、今後よろしくお願いしますね!ありがとうございました。
  • ダリア 様

    なんだかんだいい終わり方になって良かったと自分でも思います。あとがきにも書いてますが、最初はその予定なかったので。

    小野についてだいぶ気になって貰えているようで嬉しいです。直哉絡めればいい味出そうな気はしますね。予定は未定ですが……

    お読みいただきありがとうございました。今後ともまた何か書きましたら、よろしくお願いいたします。
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