映画館へ行くのにすら数時間を要する山奥のど田舎。そんな町に生まれた「私」は、一年前のあの日、偶然帰り道で出会った青年の事を思い出し歩を進めていた。降りしきる雨の中、彼女が見た光景…

　晩秋の薄暮、私立聖繍高校で起きた殺人事件。その被害者を発見した「僕」は、通報者となった事を切欠に事件へと関わっていく。果たして将来を嘱望された優等生、暁峰（あきみね）ヨシホを殺…

　うだつの上がらない中年男性の「僕」は、推していたアイドルの突然の結婚報告に呆然とする。しかして走馬灯の様に巡る記憶を他所に、季節と時間は刻々と過ぎ――。それは結ばれる事の無い十…

　岡山の山奥に住むJK、兎上ひよりは、通学に進学、それに趣味と、全てを賄う為にやらざるを得ないコンビニのバイトに、心から辟易としていた。ひと夏の上京で思い知った都会との格差を穴埋…

　百年戦争の最中、祖国によって見捨てられ死に至った聖女、ジャンヌ・ダルク。その救出を希いながらも、恐怖から身動き一つ取れなかった一人の騎士は、セーヌ川で彼女の遺灰をかき集めながら…

　レイナによって調律されたジャンヌの想区。 　しかしそこには、毎夜悪夢にうなされるジル・ド・レの姿があった。 　彼の脳裏に浮かぶのは、火刑台に処せられた聖女の非遇と、それを呪う…

　かつてカフカは苦しみました。 　パンの為の仕事と、全く花開く事の無い自らの文学の狭間で。 　それは今を生きる私たちにとっても同じと言えるでしょう。 　筆者もまたそうです。創…

　風俗店員として入社した僕は、とある系列店にヘルプとして入っていた。そこに居たのは、かつてのNo.1、今は辛うじてNo.2に縋る、ボロボロに擦り切れた女の子だった。

　2017年10月4日。東京で暮らす僕は、長野に住む彼女と夜空を眺めていた。その日はちょうど、とあるアニメの中で彗星が降った日だとかで、二人して盛り上がったのを覚えている。だけれ…

　予てから自主制作で交友のあったアニメーターY。半ばゴミ屋敷と化したそこに住むYの元を、今日も今日とて無目的に訪れる僕。しかしてそこに広がっていたものは、小蝿と蛆の死骸に塗れた地…

　夢を追いかけて上京した「私」は、気がつけばそれなりの年齢になってしまっていた。寄る年波に抗いながら、今日も今日とてガールズバーのプラカードを掲げる。折しも十年来の寒波が冷たい雨…

かつては夢を追いかけていたかも知れない、私。 満員電車の中で代わり映えのない世界を見つめる私は、一年に一度だけ、その景色が変わる瞬間を知っていた。――四月、桜が咲くその季節に訪れ…

上京後、暫く荷揚げ屋のバイトに従事していた僕。そんなある日、新築現場の清掃に向かった僕は、同席した作業員から昔あったのだという殺人事件の話を聞く事になり――。

時代と共に生まれ、時代と共に消えゆく都市伝説――、遺聞奇譚《ロストロア》。探偵業を営む鷹野ロアは、そんな消滅間近の物語を救済する異能を有していた。VRyoutuberと化したトイ…

歩きスマホ中にトラックに轢かれ死亡したホシノ・クロノが目を覚ますと、どうやらそこは異世界だった。ぱっと見和製ファンタジーそのものの異世界では、レトロゲーのRPGさながらに、始まり…

　マックで会話する女子高生。 　電車で談笑する男性社員。 　見た目に反し正義漢なヤンキー。 　誰かが言った、誰かに聞いた都市伝説から、怪談が消えたのはいつからだろう。怪談の足跡…

　愛知県M市某所、福島原発の復旧作業に赴くべく手を挙げた「僕」は、派遣元であるK興業の寮にやってきていた。牧歌的な風景、長閑な田舎を絵に描いたような山間の古民家。――しかし新たな…

終了が、すなわち世界からの消失を意味するソーシャルゲーム。 あったという記録すら残らず、記憶にも残されず、ただただ消えゆく運命にあった幾千の物語は、しかして一堂に会し、さる託宣を…

　これは「あの歴史的な瞬間に」生まれてすらいなかった人間の、妄言。いやちょっとピンポイントすぎるでしょう……集まるんですかこれ。私が心配する話じゃないですが。 ※本作は「アニ…