先日、あるテレビ番組で、アメリカで実際に起きた凶悪事件の再現ドラマが放送された。
それは、怨恨を理由に女性を生きたまま焼き殺そうとした男の話。被害者の女性は全身に重い火傷を負いながらも奇跡的に一命を取り留め、彼女の証言により男の有罪が確定。終身刑が言い渡された。もし女性が命を落としていたら、死刑は免れなかっただろう。
生きたまま直に人間を焼き殺すというのは、それほどまでに残虐極まりない非道な行いということだ。
こういった現実を踏まえると、ファンタジー作品によく見られる火炎系の魔法がいかに残酷で忌むべき攻撃手段であるかがよくわかる。しかしながら、そういうことを肌で感じる本格ファンタジーはほとんど見かけない。
勘違いする人がいるので断っておくが、別に残酷な描写が必要と言っているわけではない。物語を広く世に知らしめたいなら、むしろ極端なグロさなんて無い方がいい。重要なのは、火の魔法がもたらす残虐性や危険性について、物語世界に生きる人々がきちんと向き合い、実感していること。そういった脅威と隣り合わせの世界で、彼らがどう暮らしているか。国や社会は、脅威をどのように扱い、取り締まっているか。そこから生まれる恐怖、偏見、差別、弾圧、苦悩、葛藤などを、人間らしく描けているか。そういう意味での現実味である。
念のためにもうひとつ断っておくが、ダークな世界観を推奨しているわけではない。負の感情があれば、当然プラスの感情もある。むしろ、そういう二面性を描くからこそ人間臭さがより際立つわけで。つまりは、人間を人間らしく生き生きと描くこと。それが大切という話だ。
三流ラノベにありがちな、火炎系魔法の「衣服さえも焼け焦げない設定」や「あたかもスタイリッシュな攻撃手段とでも言いたげな軽薄な取り扱い」がいかに陳腐な子供だましであるか、もはや言うまでもないだろう。火というより、大して熱くもない正体不明の物体をぶつけるだけの物理攻撃。そこで暮らす人々も、感情にリアリティのない不様な操り人形ばかり。そんなレベルで本格ファンタジーを気取っているとしたら、とんだお笑い草だ。
火傷も衣服着火もなく、忌むべき脅威に大衆は何の恐れも抱かない。そんな都合のいい設定をどうしても使いたいのなら、魔法によって発生する火の性質を実際の燃焼とは異なるものとして扱えばいいわけだが、そういうことをストーリー上で違和感なく定義付けられる書き手はあまり多くない。大半は魔法の火と実際の火の区別があやふやなまま、ご都合主義の子供だましな描写や展開を強引に貫き通す。そんな様だから、何でもありで掴み所のない退屈な駄作になる。これが巷に溢れるファンタジー作品に漂う安っぽさの原因のひとつであることは、疑う余地もないだろう。
というわけで、この企画では「魔法や魔物などの脅威に現実味のある本格ファンタジー」を募集する。読み合いではないので、読む読まないは各自の自由。ファンタジーであればジャンルは問わないが、上で述べたような子供だましの三流ファンタジーの参加はご遠慮願う。
ちなみに、この条件をクリアできる作品は非常に稀であるため、参加数はほぼゼロに等しいと思われる。よって、企画の早期終了にはご留意いただきたい。
参加する小説の設定画面で、自主企画欄にある「魔法や魔物などの脅威に現実味のある本格ファンタジー」を選択してください。
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