概要
その旅に出るには、レオナは幼なすぎた
シルバ山には、かつて魔王を倒した大魔法使い、パーシヴァルが住んでいる。年老いたパーシヴァルには一人の弟子、レオナがいた。レオナはいつか、師匠のような魔法使いになりたいと願う。だが、師匠は一向に魔法を教えてくれない。そんな中、十二歳の誕生日に、レオナは初めて師匠の言いつけを破った。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!児童文学です。等身大の少年が、世界を救う優しいお話。
主人公である魔法使いの弟子・レオナは、ごく普通の少年なのです。師匠とのお別れには全力で打ちひしがれて、困難に挫けそうになる弱さだって持っている。彼には魔法だって未知のもの、「できること」「できないこと」の狭間で葛藤をしながら、ピンチの時には勇気を振り絞って筆箒を握りしめるのです。
けれど、そんな彼の子供心を委ねるように綴られる冒険譚だから、見守りたくなる。彼が描き出すあやふやで優しい結末を見届けたくなる。
物語のむすびは、子供の寝物語に口遊みたくなるような、美しい明日のある結実です。世代を問わず楽しめる作品、どうぞご覧になってください。 - ★★★ Excellent!!!筆箒の魔法使いと、風に舞う弟子の物語
静かに降る雪の中で、老いた魔法使いとひとりの少年が暮らすシルバ山。――その幕開けは、まるで心に白い布をそっとかけるような、優しい導入でしたね。
『筆箒の魔法使い』。この物語は、忘れ去られた“力”と、それを継ぐ者との対話であり、時代の終わりと始まりの狭間で生きる魂の物語だと感じました。
第一話「とんがり帽子の魔法使い」では、魔法というものの輝きと影が、静かな筆致で描かれていました。レオナの純粋な憧れと、パーシヴァルの哀しみを帯びた沈黙。スープの湯気のように立ち上る、二人の間にある優しい温度差が、読んでいて胸に染み入るようでした。
とりわけ印象に残ったのは、嵐の中で杖を掲げるパーシヴァルの…続きを読む