えー、昔からライトノベルはタイトルが重要でございます。注目を集めるために作家の皆様はパワーワードを好んで使うんですが、ひとつふたつじゃ不安なもんで、あれもこれもと使いたくなる。とある作家もタイトルに悩んで『異世界転生(仮)』としか決められない。仕方なく担当編集に相談したら「異世界転生したら最強でした、というのは?」と応える。それでも物足りない作家は、さらに言葉を求めます。「追放されたので辺境スローライフはどうです?」「いいね、もうひと声」「不遇スキルがチートでした」「もっともっと!」。次第に興が乗った作家も編集者も思いつくまま単語を挙げます。「グルメ!」「ダンジョン経営!」「悪役令嬢!」「婚約破棄!」「元聖女も追加して」「幼馴染も忘れちゃいけない」「Sランク冒険者!」「魔獣をテイム!も夢があるね」「あ、ドラゴンにしましょう格好良いから」「スライムも可愛いよ」「おっと、流行りの配信要素もつけなければ」「勘違いも今は人気です」「エルフに獣人!」「錬金術!」「いつの間にか伝説になってました!」「よし! これだけあれば十分だ」「では先生、通して読んでみましょう」。作家が胸を張って読み上げます。「『異世界転生したら最強でしたが追放されたので辺境でスローライフをしていたら、婚約破棄された悪役令嬢と元聖女と幼馴染がやってきて、グルメを楽しんでダンジョン経営を始めたらドラゴンとスライムをテイムしたSランク冒険者だとエルフや獣人に勘違いされ、配信したらいつの間にか伝説になっていました~実は不遇スキルだと思われていた錬金術がチートでした~』」「おお、傑作の予感がします……ところで先生」「はい」「主人公、何者です?」「まだ決めてません」「そうですか」──実際こんなタイトルを見たら気になって読んでしまいませんか? 私は読んでしまいそう。面白いタイトル付け、よろしくお願いします。
現代のオタク大学生4人組が昭和初期の日本へタイムスリップ! 娯楽の少ない時代に、自分たちの愛するライトノベルを生み出すため昭和の文学界に挑む! ラノベ創作に燃える若者たちの歴史改変ファンタジーです。
コミュ力お化けな主人公・涼宮が、意地と情熱でライトノベルを売り込んでいく姿が熱い!
涼宮はサークルの部長といえど、特別な文才や絵心があるわけじゃない。けれどライトノベルへの情熱を武器に出版社へ何度も作品を持ち込む。しかし、「小説は高尚な文学であるべき」という価値観が根強い業界で、ライトノベルは理解されず、門前払いにあってしまう。それでも「俺たちが時代を変える」と信じて、挑戦を続ける姿に引き込まれるんです。
何故そこまで自信を持てるのか。それは涼宮が仲間の才能や努力を誰よりも信じているから。そんな涼宮の信頼に仲間たちも応えるべく創作に打ち込む。オタク心で結ばれた仲間の絆が、さらに胸を熱くさせるんですよ。
やがて世に出た彼らのラノベは賛否両論の大論争を巻き起こし、文学の常識を塗り替えていく……。ラノベへの情熱が滾る一作です。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)
突如、女子サッカー育成ゲーム『エンジェルイレブン』の世界へ転生した主人公。高校一年生・朝花春陽となり、弱小サッカー部を率いて高校生リーグの頂点であるヴァルキリーカップ優勝を目指す、学園青春スポ根小説です。
ゲームの世界で個性豊かな女の子たちと出会い、ひたむきにサッカーに打ち込む姿が、まさに青春の1ページでワクワクするんですよ。
主人公の春陽が転生したのはゲーム内で最弱の高校。上級生は度重なる敗北で心が折れて、サッカー部は活動休止中という最悪の環境。しかし、春陽たち1年生組は、クセが強いながらも意気高く、秘めた才能の持ち主ばかり。そんな少女たちと時には衝突し、時には支え合いながら、サッカーを通して信頼関係を築いて、一つのチームへと成長していく過程が心躍る。
こっそりゲーム知識を活かして仲間を育成し、自らも努力を重ね、最弱チームを少しずつ最強へと変えていく。スポーツの熱血さと青春ドラマ、そしてゲーム転生ならではの戦略性。サッカーの熱狂と興奮を全力で味わえました。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)
東京の投資会社を辞め、仙台で暮らし始めた青年・九条晴臣。寂れた神社で『残り福』のお札を拾ったことをきっかけに、不思議な幸運に恵まれるようになる。社会の片隅に忘れ去られた残り物から一攫千金を掴んでいく成り上がりサクセスストーリーです。
『残り物には福がある』という、誰もが知ることわざ。本作はその言葉通り、残り物から大きな可能性を引き出していく展開に夢があります。
宝くじ売り場の売れ残り、閉店セールで片隅に置かれた古びた道具、倉庫でほこりをかぶっていた用途不明の箱など、一見価値がないように思える品々が、『残り福』の導きによって思いもよらない価値を生み出していくストーリーに毎度驚かされます。
単に主人公が都合よく大金を手にするだけの物語ではありません。「世の中に不要な物はなく、不要な人もいない」という温かなメッセージが込められている。人も物も最後まで見捨てず、その価値を信じ続けることの大切さを教えてくれます。
新しい商品や流行が次々と生まれる現代で、私たちは目新しいものばかりを追い求めがちです。しかし、本当に価値のあるものは、見過ごされてきた場所にこそ眠っているのかもしれない。そんなことを改めて考えさせられました。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)
主人公・池端修二は、神戸支社で仕入れ営業を担当する四十八歳の中間管理職。そんな彼の部署に、新入社員の周防未来が配属される。東大卒の才女と期待された彼女だったが、職場や取引先で次々と騒動を引き起こすトラブルメーカーだった。おじさん課長がイマドキ女子社員に振り回されるドタバタお仕事コメディです。
常識の通じないイマドキ女子の新人教育に神経をすり減らすおじさん上司の苦労が身に染みるんですよ。
新人の周防は、わからないことを素直に質問できず、自己判断で仕事を進めて大きな失敗を繰り返す。それでいてプライドだけは高い。「ああ、新入社員の頃は自分もそうだったなぁ……」と、最初は微笑ましくなりましたが、毎回、笑い事では済まされない大失態の連続に冷や汗が止まらない!
問題児を押し付けられながらも決して見捨てず、トラブルが起こるたびに取引先へ頭を下げにいく池端課長の人間性に頭が下がります。さすがの周防も懲りて、池端課長の仕草を真似し始める姿がちょっと可愛いんですよね。
仕事で失敗した人や、職場の人間関係に悩んでいる社会人にぜひ読んでほしい。「自分はまだ恵まれている……」と少し前向きな気持ちになれるかもしれません。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)