先日、カクヨムの公式Discordサーバーがオープンしました。私も早速参加させていただきました。毎日、参加者が自分たちの作品を読みあったり、創作の意見を交わしたり、カクヨムユーザーの交流が盛り上がっていますね。私もボイスチャットに部屋を立てて「公式レビュワーです何か質問ありますか?」と議題を投げかけてみたのですが、最初の質問が「公式レビュワーってなんですか?」でした。ここの特集ページで作品紹介を書いているライターのことです! 埋もれている名作を掘り返したり、次のヒット作に繋がる若い芽を探したりしています! まだまだ活動が知られていないようなので、知名度を上げるべく定期的にサーバーを訪れようと誓いました。いえ、私のことは知らなくていいので、ここで紹介した作品は読んで欲しいです。どうか皆様、今後ともカクヨム特集をお願いいたします。

ピックアップ

あなたの町へ本を届けに。田舎町を巡る移動書店の不思議な出来事

  • ★★★ Excellent!!!

 改造したバンに本棚を積んで、本屋のない田舎町を巡回する移動書店『BOOK MARK』を営む青年・大森雄星が、あるときから本の世界に入り込んでしまったり、本の中の登場人物が出てきたりと白昼夢のような不思議な体験に遭遇するようになります。

 ジャンルはSFだったり、ホラーだったり、スポ根だったりと種類もさまざま。ときには危ない目にもあったり、逆に助けてもらったり、平凡な日常にちょっとした変化を与えていくのが楽しいんですよ。

 さらに移動書店の噂を聞き、学生時代の後輩の女子・青木和花が店員として押しかけてきて、年頃の女性とふたり旅をすることに。彼女の働きで売上が上がり、小学校や役所からの依頼も増えてますます追い出しにくくなっていく。

 恋人ではないが、さりとて拒むでもない。お互いに大人なのに、自分の想いがはっきりしない二人の関係がなんともじれったい!

 可愛い女性と、好きな本に囲まれて自然豊かな田舎町を旅する悠々自適な暮らし、本好きにはたまらなく憧れます。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

夢の国の守り人。お客様の笑顔は我らが守る。

  • ★★★ Excellent!!!

 さまざまなアトラクションと可愛いマスコットが名物のとある夢の国のテーマパーク。若き女性警備員・一関が勤務する警備部に新しく採用された青年・天童は元捜査一課のイケメン刑事。そんな天童さんをパークに馴染ませるため一関さんの指導の日々が始まります。

 元刑事が夢の国で働くというギャップが可笑しいんですよ。警備員といえどもテーマパーク。お客様に威圧感を与えず、常に笑顔でなくてはなりません。しかし天童さんは無意識に殺気立って、迷子の子供を怖がらせてしまうから困ったものです。

 そんな新しい警備員にパーク中のスタッフが興味津々。むくつけき海賊団に勧誘され、着ぐるみのマスコット組にはからかわれ、女王様と魔女からお茶会に誘われる。真面目な天童さんは戸惑うばかりですが、周囲から浮いている天童さんが早く馴染めるようにと歓迎しているんですよね。変わり者だけれど仲間思いなスタッフの優しさが心温まります。

 そんな天童さんですが前職の経験を活かして不審者を見つけたり、酔っ払いを確保したりと活躍する姿がかっこいいんです。スタッフも働くことを楽しみながら、テーマパークを盛り上げるお仕事風景が素敵でした。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

生徒一人8000円。平等に生徒に接する高校教師の学園ドラマ

  • ★★★ Excellent!!!

 かつてはドラマのような理想の教師を目指しながらも、現実に挫折した27歳の高校教師・遊佐二月は仕事として生徒に接するようになっていた。月給を生徒数で割った一人8000円。それが生徒のために働く彼のボーダーライン。ドライな高校教師が校内トラブルを解決していく学園ドラマです。

 2年2組の担任の遊佐には、さまざまな負担がのしかかる。不良生徒を監視したり、不登校の生徒を訪問したり、女生徒からの誘惑をかわしたり、生徒のために頭を悩ます毎日だ。

 普段は仕事として割り切っている遊佐ですが、ときたま熱血教師の顔が出てしまうのがいいんですよ。トラブルが起きれば知人の探偵に情報を集めてもらい解決に立ち上がる。必ずしも綺麗に収まるわけではないけれど、問題を根本から断っていくのが痛快です。

 本人は決して良い教師ではないと自嘲しますが、問題が起きた時に率先して行動できる教師がこの世の中にどれだけいるだろうか。いろいろと気難しい年頃の高校生にとっては、ほどほどの距離感で見守ってくれたほうが有り難かったりしますよね。

 さまざまな価値観が複雑化する現代では、遊佐のような先生が理想の教師なのかもしれません。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

時空を超えた絆の物語。ドラえもん映画から学ぶヒットのひみつ

  • ★★★ Excellent!!!

 みんな大好きドラえもん。海外でもファンの多いドラえもんの人気の秘密はどこにあるのか。名作『映画ドラえもん のび太の日本誕生』の新・旧版を比較してシナリオ分析をやってみようという試みです。

 新旧の違いはスバリ、のび太とククルの友情や、ペガ・グリ・ドラコの三匹の絆といったキャラの掘り下げが随所で行われている点だといいます。

 そして終盤のストーリーの大幅な変更。旧版では罠にはまりタイムパトロール隊に救出される大人任せな結末だったのが、新版では子供たちが力を合わせて悪い大人に勝つ、成長と感動の大団円になっているのです。

 それぞれパートごとの分析を読んでいくと、成る程と頷ける指摘が多く、創作に活かせる発見が詰まっていました。

 ちなみに旧作映画には社会風刺が込められているのはご存知ですか? 公開当時は環境破壊が社会問題になっていました。

 『日本誕生』には、コンクリートジャングルで埋め尽くされた息苦しい日本をリセットして、子供たちに新しい日本を作り直して欲しいという作者の願いがあったように思います。

 初公開から35年後の今、私たちは藤子・F・不二雄先生が望んだ未来の日本を作れているのでしょうか……。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)