先日、入谷の朝顔市に行ってきました。朝顔は古来より江戸っ子に愛された夏の風物詩。始発電車に乗って朝6時に到着しましたが、早くも威勢の良い店主の呼び込み合戦が始まり、鬼子母神を祀る真源寺の参道にところ狭しと並べられた色とりどりの朝顔を浴衣姿の女性が見物していました。私も一通りお店を巡ってお話を聞いてみました。例えば、朝顔は同じ品種であっても花の色が違い、咲いてみるまでわからないとか。白い色が混じっているのは染め物にちなんで「しぼり」と呼ばれて希少であるとか。歌舞伎の市川団十郎が柿色を好んでいたことから柿色の朝顔は「団十郎朝顔」と呼ばれて通好みなのだとか。身近な花なのに知らないトリビアばかりで驚きに満ちていました。身近なことでも調べてみると面白い発見があるものです。創作もありふれたテーマや題材を掘り下げると意外な面白さや新しい魅力が隠れていたりします。是非、皆さんも身の回りのものを見返してみてはいかがでしょうか。

ピックアップ

ハッピーをクラフトする! ドラゴン三姉妹と暮らす無人島生活

  • ★★★ Excellent!!!

 異世界に転生した主人公・雨宮虎太郎が降り立ったのは危険なモンスターが徘徊する無人島だった。試練で島を訪れていた竜人族の三姉妹のエセル、ジェシカ、リタと出会った虎太郎は、彼女たちと一緒にハッピーなスローライフを目指して無人島生活をスタートする。

 転生特典で与えられたクラフトスキルで大自然の中から素材を集めて無人島を開拓していくサバイバル生活が冒険心に溢れてワクワクします。

 おまけに美少女三姉妹との共同生活に胸が高鳴ります。真面目で包容力のあるお姉さんキャラな長女エセル、活発で親しみやすい次女ジェシカ、幼いのに小悪魔的仕草で誘惑する三女リタ、それぞれ異なるタイプの三姉妹が魅力的で可愛いんですよ。

 人間とドラゴンのハーフである彼女たちはモンスターを圧倒する強さを誇るが、手先は不器用。お互いの得意分野で助け合って、困難を乗り越えていくうちに信頼できる家族になっていく姿が心温まるんです。

 次第に生活が軌道に乗り始めた矢先、島に台風が迫る。島を襲う災害に、四人は如何に立ち向かうのか! ものづくりとスローライフ、ラブコメいっぱいの異世界ファンタジーです。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

無敵と最強の凸凹バディ! 雨男と晴れ女の異能事件簿

  • ★★★ Excellent!!!

 最先端技術によって築かれた女神ヶ丘市は常に治安維持システムによって監視されている。その厳重な監視網をすり抜けて発生するのが異能犯罪だ。特殊人材派遣会社「ウィル」に所属する雨宮雫と陽向咲輝は、そうした異能犯罪の解決を生業とするエージェントだった。雨男と晴れ女の凸凹コンビが異能犯罪に立ち向かうクライムサスペンスです。

 几帳面で慎重な雨宮と、大雑把で大胆な陽向。雨の日は無敵な雨宮と、晴れの日は最強な陽向。性格から能力、趣味嗜好も正反対な二人が凶悪犯に立ち向かうバディ要素が面白かったです。

 二人の元に持ち込まれたのは、不可解な連続転落死事件。周囲に落ちる建物のないビルの屋上、あるいは床も天井もある室内で転落死の遺体が発見される。犯人はいかなる異能を使って犯行を行ったのか、そしてそんな異能にいかに立ち向かうのかが見所です。

 事件を捜査していくうちに、犯人たちに異能を目覚めさせる正体不明の『魔女』の存在が見え隠れする。『魔女』は何者なのか? そして雨宮と陽向の関係は? まだまだ読者に明かされない物語のバックストーリーも多く、これからの物語展開に期待したい。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

スパイはもう死んでいる。愛と陰謀の純情スパイストーリー

  • ★★★ Excellent!!!

 軍事独裁国家アルトベルゼの極秘のスパイ養成組織、通称『学園』。数々の困難な任務を成功に導き、学園のみならず国内の工作員から信奉を集めていた天才少女フェイ・リーは突如、国を裏切り、暗殺された。その彼女を政府の命で殺害したスパイ候補生アラタ・L・シラミネは、彼女の後輩で恋人だった。

 主人公のアラタはスパイ養成校の生徒会長。同世代の中で最優秀にして出世の道を約束されたエリートですが、彼の心を占めるのは愛国心と、そのために最愛の人を殺した喪失感の二律背反なのです。その恋人フェイ・リーは、死してなお影響力を持つカリスマ的スパイで、彼女に心酔した反政府組織『セラフィムの意思』との暗闘をアラタは余儀なくされる。

 総統の後継者を巡る政府の権力争いに巻き込まれるなか、次第に謎に包まれていたフェイ・リーの裏切りと抹殺計画の真相が見えてくる。信じていた指導者、国家の裏切りを知り、これまで命じられるまま手を汚してきたアラタは、唯一の真実だったフェイの愛に気づくのです。思春期の男女の複雑な愛憎、陰謀と思惑が絡み、正義と悪が二転三転する秀逸なストーリーに唸りました。

 一組の男女の愛と陰謀が国家を揺るがす壮大なストーリーのスパイ学園ものです。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

深夜の間食は何故うまい。 ジャンクフードは心と人生を豊かにする。

  • ★★★ Excellent!!!

 何故、人は身体に悪いと知りながらジャンクフードを食べてしまうのかという人類の永遠の命題に向き合ったエッセイです。

 こってりが特徴の天下一品のラーメン。人前では行儀が悪いと躊躇ってしまう残り汁へのご飯ダイブも天一では推奨している。そこには食べ方に貴賤はないという食の寛容さがある。

 自身の人生の傍らには常にジャンクフードがあったという作者。受験生の深夜勉強や、会社員のハードな残業を戦い抜くには、ヘルシーな料理にはない油分、塩分、糖分によるエネルギー補給が求められる。ジャンクフードは過酷な現実社会を生き抜く現代人の知恵なのだ。

 曰く、若い頃に身体を気遣ったとして、老いてからは好き食べられなくなる矛盾した肉体を我々は抱えている。食の満足を失えば「ニコチン」、「カフェイン」、「アルコール」の三大栄養素に頼らざるを得ないが、それらを過信した作者の後悔を我々も重く受け止めなければならないだろう。

 ジャンクフードを食べることは、そもそも健康でないとできないことだ。それにジャンクフードは空腹を満たすだけでない、気持ちの満足感が得られるように思う。作者を見習い、これからも真摯な気持ちでジャンクフードをいただくことにしよう。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)