9月に応募が終了した「カクヨム甲子園2023」。高校生の皆さんの執筆を応援すべく、応募終了後に再度開催した「レビューキャンペーン」にて、期間中に投稿されたレビューの中から、運営スタッフにより4本、レビューを選ばせていただきました。あらすじを要点を押さえてわかりやすく説明しつつ、作品の美点を射抜いていたり、作品から想起された経験を等身大に語っているレビューは、短くてもそのまま作品ページへ引き込まれるような力がありました。また、惜しくも4選には漏れたレビューにも、素敵なものがたくさんありました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
「カクヨム甲子園2023」この後もぜひ応募作品にご注目ください。
海の上に二つの死体が浮かんでいる。
その海は自殺の名所で、この世に絶望した人達が飛び込んでいるのだ。
今宵もまた、死に場所へと向かっていく人物が――
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ゾッとくるショートショート。
様々な推測をしながら読み進めていくわけですが、キレの良いスライダーのごとく抉ってきます。
「違和感を覚えた時にはもう手遅れ」といった感じが、この物語の特長になっているなと思いました。
不気味な余韻を残しつつ終わる文章は、阿刀田高さんのショートショートを思わせるものでした。
認知症になってしまった、大好きなおじいちゃんとおばあちゃん。
高校生の孫の視点で描かれる、大切な人達が病に冒され進む変化と支える家族の大変さ。
介護や看病の苦労の実態はそばにいる人が一番痛感しています。
認知症がいまいちどんな病気か知らない、身近ではない人達にも読んでもらいたい作品です。
最後のさくらちゃんのモノローグが心にずしんときます。人一倍努力すれば、おのずと成果はついてくる。本当にそうなのでしょうか?
人より少しリードした位置でスタートを切ったけれど、次第に追いつかれ始める。自分では努力しているつもりなのに、ちっとも成果は伴わず、差は縮まるばかり。努力していれば必ず成果に結びつく、そう信じて努力し続けるものの、自分の努力はどうやら実を結ばないようだ。そう気づくころには、もうゴールが見えている。今までの努力は、いったい何だったのだろう?
弓を引く緊迫感あふれる描写の心地よさとともに、悠希とさくらの対比にぞくりとさせられる作品です。