春爛漫、そろそろコタツをしまおうかと考えている担当です。
 夜の寒さも和らいで、過ごしやすくなって参りました。季節がよくなると、どこか遠い、知らない場所に行きたい気分になりませんか? とはいえ、世の中は新年度。旅に出るには忙しい……そんな時に寄り添ってくれるのは、いつも物語です。
 今回は、皆さまの旅情を満たすような、少年少女が頑張る冒険作品を集めて参りました。父親探しのために家出した無邪気な少女の冒険、絶命した少年が吸血鬼の少女として蘇り、旅に出るハイファンタジー、武器商人を目指す少女と傭兵の旅路、村の窮地を救うため、1通の書簡を届ける旅に出た少年の戦記……とどれも濃厚な旅と冒険のお話となっております。
 雄大な世界観に身を浸すような読書を、ぜひお楽しみください。

ピックアップ

故郷を滅ぼされ死を迎えたTS吸血鬼少女が心から望むものとは。

  • ★★★ Excellent!!!

心優しい無力な少年が、絶望の果てに死に、そして神の力のもと強大な吸血鬼に生まれ変わった。
そして始まる、心の求めるモノを知るための旅。
家族と故郷を奪われた恨みの果て、彼女が求めるの復讐を果たすことなのか。
元婚約者や神聖騎士団との関わりの中で見出す路はどこへ続くのか。

続きがとても気になる作品です。

これは愛を探す旅の物語

  • ★★★ Excellent!!!

ルベルは旅に出る。いなくなってしまったパパを探す為に。大好きなパパと再び暮らせるようになる為に。彼女に愛を注いでくれる、たくさんの仲間と共に──

主人公は10歳の女の子ルベル。彼女が探しているパパとは、彼女の実父で元暗殺者という異色の経歴の持ち主です。彼は監獄島という場所にいるらしいのですが、ルベルのもとに帰ってくる気配は一向にありません。
ルベルは少女ではありますが、その小さな体に秘めているのは不屈の精神と大人顔負けのガッツです。実年齢よりもかなりしっかりしており、頭の回転も早い彼女は、パパに会う為に入念に計画を立てて強引に旅を開始します。もちろん周囲の大人は彼女を一人で行かせるわけにはいきませんから、賢者の青年が巻き込まれつつも旅路に同行することに。

特筆すべきはルベルの健気さ。パパが大好きな彼女の強い想いが周囲を感化し、旅を続けるうちに彼女に絆された仲間が増えていきます。
種族や性格の違う仲間達が仲良く旅をするシーンはとても楽しそうで、自分も一緒になってこのメンバーと旅をしたい気持ちになること間違いなし。そして、皆がルベルの気持ちに寄り添って彼女の力になろうとしてくれる優しさに胸を打たれます。

また、ルベルの父ロッシェが彼女のもとへ帰らない理由もとても切なく…そこには暗殺者として育てられた彼の壮絶な過去、そして妻との悲恋が隠されていました。

この物語はルベルの旅ではあるものの、父であるロッシェの心の旅でもありました。
夫婦の愛。仲間の愛。親子の愛。旅の果てに見つけた様々な「愛」に触れた時、読者も涙せずにはいられません。

楽しい仲間達との掛け合い、切ない悲恋、そして心あたたまる愛情の物語がお好きな人におすすめしたい、とても素敵な作品です。

戦争なのに、おいしそう

  • ★★★ Excellent!!!

晩御飯をたっぷり食べてから挑みましたが、だめでした。読んだあと、おなかがすきました。完敗です。

とにかく食事シーンの描写が美しく、おいしそうです。それほど一品一品に執着して描写しているわけではないのに登場する食べ物に興味が湧くのはなぜでしょう。また立ち寄る宿や村のそれぞれになんともいえない旅情があり、シャラーレフの瞳を通して異国の地に想いを馳せる自分がいました。

でもこれ、戦争の話なんですよね。

物語は主人公の抱いた決意と背負った使命によって展開します。彼女の道行きは常に戦争と、不穏な未来の影がさしているのです。
しかし主人公のまなざしは、常にその大きなテーマに向けられているわけではなく、おいしそうなごはんや、異国の文化というミクロな部分にも向けられている。
その両極端ともいえる要素の対比がこのお話の醍醐味であり、ページをめくる原動力にもなっていました。
うーん、すばらしく見事な構成です。

またキャラクターがそれぞれ立っていて好感がもてました。
主人公がかわいらしく、頼もしくて個性的な美形な男性キャラクターも登場します。(個人的にサームが好きです。)

とにかく言いたいことは、大変面白いお話だったということです。
数多あるカクヨム小説の中から、この作品を見つけられて幸せです。
影ながら主人公の旅を見守らせてください。
どうもありがとうございました。

異種族同士の絆を見たくない?

  • ★★★ Excellent!!!

主人公が魅力的、それが第一かと。
主人公、アトボロスを襲う様々な不幸。
そこから立ち上がり、誰かのために一生懸命に頑張るアトの姿に涙腺を刺激されます。
またそんなアトに惹かれてか、様々な種族が仲間になります。
直情的な犬人族のグラヌス
理知的な猿人族のラティオ
飄々とした鳥人族のヒューデル
まだ50話ぐらいですが、どんどんこの世界観に浸かっていっています。
これを読んでちょっとでも気になったら是非読んでほしいです。