戦争なのに、おいしそう

晩御飯をたっぷり食べてから挑みましたが、だめでした。読んだあと、おなかがすきました。完敗です。

とにかく食事シーンの描写が美しく、おいしそうです。それほど一品一品に執着して描写しているわけではないのに登場する食べ物に興味が湧くのはなぜでしょう。また立ち寄る宿や村のそれぞれになんともいえない旅情があり、シャラーレフの瞳を通して異国の地に想いを馳せる自分がいました。

でもこれ、戦争の話なんですよね。

物語は主人公の抱いた決意と背負った使命によって展開します。彼女の道行きは常に戦争と、不穏な未来の影がさしているのです。
しかし主人公のまなざしは、常にその大きなテーマに向けられているわけではなく、おいしそうなごはんや、異国の文化というミクロな部分にも向けられている。
その両極端ともいえる要素の対比がこのお話の醍醐味であり、ページをめくる原動力にもなっていました。
うーん、すばらしく見事な構成です。

またキャラクターがそれぞれ立っていて好感がもてました。
主人公がかわいらしく、頼もしくて個性的な美形な男性キャラクターも登場します。(個人的にサームが好きです。)

とにかく言いたいことは、大変面白いお話だったということです。
数多あるカクヨム小説の中から、この作品を見つけられて幸せです。
影ながら主人公の旅を見守らせてください。
どうもありがとうございました。

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