不気味な事件、それに巻き込まれた雑誌記者、解決の方法を知っているコンビ…胸が躍るものがちりばめられているのですが、私が最も心を引かれたのは、「誰が欠けても物語が成立しない事」でした。
それぞれの長所が事件の解決に向けて必要なものであり、それぞれの短所が登場人物を結びつけるのに必要なものである、と感じられる物語は、なかなかあるようでないと思います。
物語も、登場人物の向かうところ、順調に手掛かりが集まり、手詰まりになる展開はない、と書いてしまえば、ご都合主義的に聞こえてしまうのですが、そうではない。
それぞれが持つ個性が切り開いた道である、考えた成果であると丁寧に描かれているからこそ、ご都合主義ではないのです。
他のレビューを読んだところ、少年が戦う、とか王道、という文字が踊っていて、どちらかというと少年ジャンプ的なノリを想像していたのですが、いざ開いてみると『妖怪やあやかしが起こす奇妙な事件が起こり、それを不思議な力を持った男の子ふたりが解決する』という女性読者も入りやすそうなお話でした。
物語はオカルト雑誌の編集者である坂崎(32)の視点で進みます。
仕事帰り、何かに追われている女性を助けようとした彼は、世間を騒がしている《即白骨》事件に巻き込まれてしまいます。
怪物に襲われていたところを救い出したのは太刀を携えた少年イチと、不思議な本を手にイチをサポートする青年、トー。
坂崎はふたりの協力を得て事件解決に乗り出します。
やんちゃなイチと、それをいさめる立場のトー、二人(主にイチ)に振り回されている坂崎の三人組の風景が読者の目にも馴染んできて、かわいらしく思えてくる二十話あたりから話に動きが出てきて面白くなっていきます。
アクセス数を確認したところ、カクヨムではありがちなのですが後半にいくほど閲覧数が下がっています。ですが後半部にこそ読者を「あっ」と思わせる仕掛けがあるので……う~ん、途中やめした読者さんは非常にもったいないことをしましたね。自分は楽しませて頂きました!
最近読んだカクヨム作品の中では久々に続きが読みたいと思う作品でした。
どうもありがとうございました。