カクヨムの夏といえば、高校生限定の小説コンテスト「カクヨム甲子園2022」。開催6年目の今年は、応募総数が既に約800作品(8/5時点)にまで達し、大きな盛り上がりをみせています。
今回は、そんな「カクヨム甲子園2022」の応募作に寄せられた素敵なレビューをご紹介。ロングストーリー部門、ショートストーリー部門の応募作品を4作品ずつ掲載しています。
創作にひたむきに向き合う作品とそのレビューを読めばきっと「自分も作品を応募してみたい!」、「レビューを投稿して高校生を応援したい!」という気持ちになるはず。高校生の方は作品を執筆して、それ以外の方は作品を読んで応援して、一緒に「カクヨム甲子園2022」を楽しみましょう!

ピックアップ

独特でシニカルな純愛

  • ★★★ Excellent!!!

水戸涼香という掴みどころのない女の子と、彼女に散々に振り回される主人公。
読者として主人公と一緒に振り回され、踊らされ、手玉に取られつつも読み進めていくと、そんな彼女の真意が見えてきます。
そうして結末で水戸涼香という人物を理解した時、味わえるのは「一枚の写真なんかで収まりきらない」彼女の思いの美しさでした。
すっと胸に落ちるようなその結末は、爽やかな読了感を味あわせてくれます。

この作品の文体は独特なシニカルさで満ちており、それが二人の関係性をより際立てています。
人物と文体とが違和感なく混じり合い作られた世界は、作者様の強いオリジナリティを感じました。

何が悪で、何が正義……?

  • ★★★ Excellent!!!

人類の永遠のテーマである「悪」と「正義」。
厄介なことに、これらは言葉で定義することが出来ないのです。

皆さんは月の大きさをどれくらいだと思いますか?
「地球よりも小さい」と、図鑑等に描かれている絵を思い浮かべて答える人もいれば、地上から見た景色として「卵くらい」「オレンジくらい」と答える人もいます。
どちらも間違いではありません。
少なくとも、その人が置かれている状況に沿った「正しい」答えのはず。
それぐらい、「悪」も「正義」もあやふやなものなのです。


作者さまは、この凄惨な物語を通して「何が悪で、何が正義?」と、私達に問うているのでしょう。
(よくこれだけの内容をこの短文で……と感心してしまいました)

答えはないかもしれないけれど、考えなければいけない。
祈りにも似た作品です。

登場人物の関係の変化が好き

  • ★★★ Excellent!!!

 『ファンタジー×地震』という他に類を見ない作品。生き残った者が、死者の命を背負って生きる。ある種のサバイバーズギルティを題材にしてるのだと思いました。
 面白いと感じたのは、数日という間にアムネシアにとってエリーが大きな存在になるまでの関係の変化です。
 特に、エリーの態度がある時を境に一転すること。そこからはアムネシアではなく、エリーがあらゆる行動の主導権をとっています。また、話し方(敬語がなくなっていたり)などからも、極限状態で2人の関係の変化が見て取れます。
 それらはエリーの過去と自身の“最期”を察していたからでしょう。だからこそ懸命にアムネシアに寄り添えた。そして終にはエリー自身の願いを叶えることができた。
 アムネシアもそれを分かったからこそ、「エリーの分まで!」となったんだと思います。
 私にとっては馴染みのない題材で、まだ評価の難しい作品ですが、それでも。
 関係の変化を中心に細かな描写が冴える良い作品だと思いました!

羅生門のその先の物語

  • ★★★ Excellent!!!

「下人の行方は誰も知らない」の先の話と聞いて、思わず読みにきてしまいました。
原作の羅生門をよく読み込んだ上で作られた、素晴らしいスピンオフ作品だと思います!
語り手の口調、情景描写等がどことなく芥川のそれに似ていて、羅生門のスピンオフというのをすんなりと受け入れられました。

なるほど……こういう解釈か。面白いです!
強盗に行く下人が、物の怪のように描写される感じ、平安末期の薄暗さがすごく物語にあらわれています。

芥川先生にも見ていただきたいですね(笑)

素敵なお話をありがとうございました!

酸味でも渋味でも誤魔化せない、純粋な甘さ

  • ★★★ Excellent!!!

先輩と後輩というシンプルな関係。
喫茶店という密閉された空間で二人っきり。
コーヒーの芳醇な香り。
苦くてコーヒーが飲めないヒロイン。
それも会いたい。会うための理由として、コーヒーを注文する。
つのる想い。溢れる想いが、この短編に詰め込まれていて。



最後、本当に甘くて、優しくて
幸せな気持ちにさせてくれます。

コーヒーと一緒に
ケーキを食べたくなっちゃいました。