はいー。プランク毎日やってるおじさんのわたくし、意外に厳しい残暑と夜からの冷え込みの落差で体をやられていますが、かろうじて元気ですよー。
関係ないお話なのですが、年波のせいか若かりし頃からの悪癖である「泣く病」が悪化して参りました。小説やコミックの映画化作品なんかを見ていると、唐突に泣いちゃったりするのですよ。なんでもない日常シーンでその後の感動シーンを思い描いたりして。いっしょに見ている者はぎょっとしますよね。「泣く要素あった!?」って。しかも、いざ感動シーンが映し出された頃には気持ちが落ち着いているので無感動だったりして訝しがられるわけです。「なんで今泣かないよ!?」。……んー、なんでしょうね。人間ってほんと、ままなりませんよねぇ。
と、いつものごとく無駄話はさておきまして。今月は金のたまごということで、ぜひみなさまに出逢っていただきたい4作品を選び抜かせていただきました。どうぞお楽しみくださいませー。

ピックアップ

朝を知らない彼だから、私は毎日朝を語りにいく

  • ★★★ Excellent!!!

就職したてで余裕のない毎日を送っていた加藤朝子は、帰宅するため乗っていた自転車をアクシデントで壊してしまう。が、そこへ朔宵照彦という少年が現れ、助けてくれたのだ。先祖の咎によって日のある時間は石となり、人として活動できるのは夜だけという一族の末裔が。その呪いを解く方法のひとつは、朝の話をたくさん聞くことだという。それを聞いた朝子は約束する。今日がどんな朝だったか、話しに来ると。

物語は『空が上手に焼けている。』から始まりますが……この一文、朝子さんが照彦くんに説明しようと考えた朝の様子なのです。実に的確でありながら味わい深い叙情が匂い立つ、すばらしいフレーズですよね。

このように、作品へ織り込まれたフレーズにはそれぞれ万感が詰め込まれています。例えば朝子さんが言う「また明日」、1日の半分石化されて虚無を過ごしている照彦くんにとってどれほどの価値を持つものか。こうしてさりげない言葉や文章で浮き彫ってみせるのです。
数多を含めた言の葉の輝き、噛みしめていただきたく。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=高橋 剛)

ステージの下と画面の向こうから描かれる人間ドラマ

  • ★★★ Excellent!!!

北関東のご当地アイドルグループ『Lipp'inガールズ』。ローカル故に活動域の狭い彼女たちだが、その笑顔をライブ会場で、そして彼女たちが配信者として登場するライブ配信アプリ“グロウライブ”の向こう側で支えるファンがいた。

こちらは特定地域やアンダーグラウンドで活動するアイドル、そのファンたちを主人公とした群像劇です。

読んでまず感じるのはファンがアイドルを応援する意味と意義ですね。知らない人からしたら価値のない偶像に過ぎない女の子が彼らにとってファム・ファタルであるという事実、そのことが熱く、それでいて細やかに紐解かれていくのです。

応援のスタンスは各人違うわけですが、それらの違いが一点に集約し、女の子たちをアイドルとして成り立たせてみせる様がまたおもしろい!

また、著者さんの別の作品にも登場するグロウライブという舞台、本当によく作り込まれていて作品のリアリティをいや増しています。

スポットライトの裏側から魅せられるアイドル世界、ずいっとおすすめいたします!


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=高橋 剛)

これはひとつの秘剣を巡る悲劇

  • ★★★ Excellent!!!

伊草忠邦の剣の師であった谷上彦市が斬殺された。それも彦市の跡を継ぎ、刃鳴流剣術道場の主となるはずだった弟、伊草鉦巻の不可思議な剣——蛇のごとくにうねり、防御をすり抜ける秘剣によって。鉦巻は夜の内に国を出ると言い残し、場を後にした。師の仇を討つべく忠邦は弟を追い、そしてついに対峙する。

剣劇です! 時代物で剣術を描いた作品、なかなかに少ないものですが、それを真っ向から描き出している作品なのですよ。

剣士が立ち合う緊迫感をそれぞれの構えの意味から説き、じっくりと対決を見せてくれているのがまず良し。そこへやるせない心情劇を絡ませ、人と人とのドラマへ仕立てているのがさらに良しなのです!

秘剣という要素をただの外連味に落とさない筆の妙と、それを支える物語的な芯の太さがあってこそ醸し出される魅力ですね。そしてその太さこそが、引き起こされる師匠殺しと兄弟対決を鮮やかに照らし出してみせるのです。

後味の悪さまでが極上の、悲哀に飾られた剣の物語。ぜひご一読いただきたく思います。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=高橋 剛)

学校生活の裏側にある親御さんたちの熱き闘い!

  • ★★★ Excellent!!!

中高一貫校に通うムスメの母である“オバ・ハーン”は、ある日の夕食後に突然知らない番号からの電話を受けた。かけてきたのはムスメの友達の母親であり、内容はこれまでPTA活動をしてこなかったオバ・ハーンにPTA本部委員活動へ参加するよう促す勧誘だったのである!

誰もが経験し、今なおドラマとして数多綴られる学校生活。これはその裏で演じられる親たちの闘いを描いたエッセイです。オバさんは広報部の一員として広報誌作りに携わるわけなのですが……PTA、半端ないです! うん、政治なんですよ。日本ならではの空気読みましょう的な感じや、言外に添えられた凄絶な圧の感じなど特に。

登場人物が学校の主役である生徒ではなくその親御さんということから生じる悲喜こもごも、感心すると同時に戦慄させられます。まさに「学校の裏側で演じられるもうひとつの真実」ですね。

親御さんは深い共感を、現役生徒さんは驚愕を、その間の方々はあの日々を支えてくれた人がいたという感慨を得られる、怖おもしろい奮闘記です。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=高橋 剛)