壁に背をもたれ、ちゃぶ台で作業している日々が祟って腰が痛むことが増えて参りました。お年寄りい! と思われるでしょうが、インドアを愛してやまないでしょうみなさまもいずれ同じ苦しみを抱きますからね? お待ちしておりまぁす!
 ……で、背中にあてがうクッションを探しているわけですよ。低反発より高反発がよさげ? 身が太ましいので小さいより大きいほうがいいですよねぇ。もちろん厚みは大事でしょう。思うことは多々あれど、通販だと実際の有り様がわかりませんから注文せずに終わることが続いているという。
 ちなみに服は大概通販で済ませるようになっています。見るところは身幅とワタリです。ボトムス(ズボンじゃなくてボトムス!)のワタリなんて太ければ太いほどいいですからね! これはまあ、年波よりも若かりし頃の価値観が作用してそうですけれども。
 今月は金のたまご回ということで、現代ドラマ、恋愛、ミステリー、エッセイ・ノンフィクションの各ジャンルより新作を選ばせていただきました。バラエティな妙味をどうぞご堪能くださいー。

ピックアップ

これは競走馬の物語ならぬ馬と人とが“結ぶ”物語

  • ★★★ Excellent!!!

「馬を見る」力を元馬主の大叔父から買われ、その道へ進むこととなった久世悠真。だが、与えられたものは小さな牧場と、実力の程も知れないデビュー前の牝馬1頭だけ。かくして勝ち確には程遠い状況の中でスタートゲートは開き、新米馬主と若馬による人馬一体の物語が走り出す。

 本作の始まりはとにかく問題ばかりで、とても戦いを始められる状況ではありません。なのに驚くほどの「わくわく」に満ちているのはそう、悠真さんの肚がしっかり据わっているからこそ。

 彼は五里霧中な競馬という世界のただ中にしかと立ち、先を見極めることを自らに課していて、牝馬シュテーリヒトは彼が指す先へひた走る。それだけの、それだからこそのストーリーの太さにまず魅せられたのですが。

 両者が言葉を越えて結ぶ絆が尊い! さらに周囲の人たちと結んでいく縁が頼もしい! それを手繰るようにさらに遠くへ、先へと進んでいく人と馬の背がまぶしくて、気づけばすっかり魅了されていましたよ。

 競馬を愛する方は無論のこと、人間ドラマ好きな方にもお薦めの一作です。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)

バレンタインチョコ粉砕事件にバカップルが挑む!

  • ★★★ Excellent!!!

 妖怪の姿が視える女子高生・朝霧志保と、幼馴染みでクラスメイト、さらには白烏の妖怪である木上木葉はバカップルとして周囲に公認されている関係だ。そんなふたりに迫るバレンタイン! しかし最近、女子がバレンタインのため用意していたチョコレートが次々粉砕されるという事件が勃発して。妖怪の仕業かと調査に乗り出す木葉だったが……

 志保さんと木葉くんの関係がかわいい! 志保さんは基本冷めた感じの子で、彼女が自分にくれるチョコを守ると意気込む木葉くん、その温度差ってやつが成すラブコメパンチをガツンと食らってしまうわけですね。

 ふたりの態度の落差が大きいからこそ見せつけられるのですよ。実はすごくなかよしですよね? 志保さんもほんとは……ですよね?

 セリフという形じゃなく、文章の芯から立ち上る彼女の心情と真情こそが、読んでいる側の胸までときめきで絞り上げるのです。著者さんの筆が巧くて憎いんですよねぇ。

 オチでしっかりすべてが回収されるたまらなさ、ぜひともあなたも食らってください!


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)

魔王の封印、それを施した者はいったい誰……?

  • ★★★ Excellent!!!

 東京のアパートを引き払い、地元である待流島へ帰ろうとしていたイサミは、フェリーの中で覚えのない絵はがきとそこに記されたメッセージを見る。『十年前、裏山に埋めた魔王の封印が、解かれるよ』。……自分の名前にも使われている“勇”の字をゲームの勇者と重ね、勇者ごっこに興じていたあの頃を思い出した彼は、勇者として魔王の謎へ挑む。

 冒頭の引きにイサミさんという人間が色濃く映されている点へまず目を惹かれました。キャラクターの造作力と描写力が本当にすばらしい。

 昔の友達――勇者パーティの面々も、なんとなく噛み合わない島の人々も。彼ら自体に力があるからこそイサミさんとの関係性やふとした関わりひとつひとつに緊迫のにおいを醸し出し、子供の他愛ない遊びに連なる魔王の謎を淵のように深めていく。物語的な仕掛けが登場人物の妙により、それこそ歯車のように連動しながらミステリーを構築する有り様、唸らされました。

 そして謎を追う中、物語は一気に転じます。ぜひイサミさんといっしょに真実と向き合っていただきたく!


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)

初心という名の迷宮はどこまでも深くてすごくやわらかい

  • ★★★ Excellent!!!

 料理初心者の雪象が料理を作る。その中で感じたあれこれや小さな失敗を経て「ごちそうさまでした!」に至るまでを綴るショートエッセイ集。

 普段何気なくしている料理ですが、だからこそこんな観点があるのか……! とまず驚きましたよ。乱切りの乱ってなに? サバを焼くときの上下って? などなど、雪象さんの疑問やとまどいはすべてがもっともです。

 そしてその表現が実に趣深いのですよねぇ。童話のようなやさしい言葉がなんとも心地よくて、うまくできない話はほほえましくて、時にちょっと起こったりズルしたりもするけれどそれもまた愛おしくて。技に開眼する姿は頼もしい――そうそう、便利グッズの紹介もありがたいのです。

 読めばちょっとがんばって料理がしたくなる! という効能はもちろんあるわけですが、ゆるふわな空気感はむしろ今日はこんなふうに力抜いちゃおうかな。と思わせてくれる。それこそが本作最大の魅力であるものと思うのです。

 料理と向き合う緊張感や倦怠感をふわっとゆるめてくれる、あたたかいスープみたいなお話です。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)