数十年ぶりにガンダムのプラモデルを組んでみました。たまたまデパートのおもちゃ売り場に並んでいたのを見て衝動買い。学生時代には、よく組んでいたのですが、社会人になってからはご無沙汰で、久しぶりに組んでみるかと『HG 1/144 ガンダムエアリアル』に挑戦。そうしたらガンプラが進化していて驚きました。ひとつひとつのパーツが小さい……。手足胴体の1箇所だけでも、10個くらいのパーツが複雑に組み合わさってる。というか、小さすぎて指でうまく掴めない……。パーツ同士が細かくてうまくハメられない……。あれ? 私ってこんなに不器用だったっけ? ブランクのせいかなと思ったのですが、いやいや、昔のガンプラはもっと大雑把なパーツでしたよ! 取扱説明書を見なくても、だいたいパーツの形だけで直感的に組めました。しかし、いまのガンプラはパーツの形状だけ見ても、どこの部位なのかさっぱりワカラナイ……。必死に取扱説明書を見ながら、間違えないようにひとつひとつ確認しながら進めて、三時間かかりました。作ってるときは、「これはどこなんだ?」と疑問だらけだったのですが、完成すると綺麗に組み上がるんですよね。過去のガンプラよりも可動域も多いし、構造がしっかりしてリアルになってるんです。いつも変わらないように見えて、10年、20年をかけて少しずつ進化していったのでしょう。メーカーさんの技術力に感動してしまいました。身近なものほど小さな変化があっても気が付かないけれど、離れていると大きな違いが見えてくるもの。人間の成長や小説の流行もそういうものかも知れません。日々、小さな変化を積み上げていくことが大切なんだと改めて思いました。
現代社会に突如現れたダンジョン。主人公は最強の冒険者……ではなく、新宿区役所の公務員・高木乾三。見た目は歴戦の戦士もかくやという巨漢だが、剣も振れない見かけ倒し。しかし彼には、条例と法律という最強の武器があった。ごく普通の公務員が不良冒険者や悪徳業者を条例と法律で懲らしめる異色のお仕事ファンタジーです。
オークやゴブリンよりも厄介な"モンスタークレーマー"をやり込める高木主任の手腕が実に痛快なんです。
ダンジョンに挑む冒険者のなかには違法行為を働いたり、悪徳業者や反社会勢力と癒着する者も少なくない。恫喝や暴力だけでなく、SNSやメディアを使って圧力をかける者まで。普段は温厚で礼儀正しい高木主任ですが、身勝手な言い掛かりや不当な要求には決して屈しない。
次々と現れる無法者を法令に基づいて粛々と追い詰め、法の裁きを与えていく展開に胸がすく。どんな状況でも冷静に対処し、区民と職員を守る。まさに理想の上司です。派手なバトルはなくとも、書類と言葉で敵を叩き伏せる。これこそ大人の戦い方!
剣も魔法も使えない。それでも悪を退治して世の中に貢献する。そんな人々を守る無名の英雄の物語、ぜひ読んでみてください。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)
令和の会社員・坂本恒一は、ある日、謎の名刺を拾ったことで、バブル景気まっただ中の1988年へタイムスリップしてしまう。気合と根性の昭和営業が色濃く残る総合商社に勤めることになった恒一は、現代のマーケティング知識を駆使して出世街道を駆け上がる!
「バブル時代に現代知識で大出世!」というだけの単純なサクセスストーリーではありません。自分だけが知っている"バブル崩壊"を見据えて、持続的な未来を創造しようと奮闘する姿に引き込まれるんです。
誰もが「土地の価格は永遠に上がり続ける」と信じて疑わない時代。恒一は短期的な利益ではなく、長く人が暮らせる未来の都市構想を目指す。恒一の提案は、土地転売に熱狂する上司や同僚には理解されず、役員には「消極的」と笑われる。それでも少しずつ景気に陰りがみえ始め、計画は次第に現実味を帯びていくのです。
時代の波に逆らいながら「本当に豊かな未来とは何か」を問い続ける恒一の姿がとにかく熱い! 恒一と対立する昭和世代の人々にも葛藤や苦悩が溢れて深い人生ドラマを映し出します。バブル経済の光と影を描きつつ、働くことや理想の社会とはなにかを考えさせられる本格ビジネス小説です。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)
SNSで人気を集めるお悩み相談アカウント「論破くんX」。可愛いうさぎが何処からともなく現れ、ちょっと毒舌な回答で人々の悩みを解消していく物語です。うさぎ目線で人間社会の矛盾を突き、ユーモラスに問題に切り込みながら、最後は不思議と心が軽くなるんです。
登場する相談者は、学生、社会人、子育て中の主婦などさまざま。誰もが「こうあるべき」という常識に縛られ、その正しさに苦しめられている。でも論破くんは、「本当にそれって正しいの?」と問いかけ、凝り固まった偏見や常識をやわらかく崩してくれる。読んでいるこちらまで「そんなに真剣に悩まなくていいのかも」と肩の力が抜けてくる。
そして論破くんの「論破」には嫌味がないのがいいんです。相手を否定的に追い詰めるのではなく、ちゃんと寄り添いながら逃げ道を示してくれる優しさがある。相談者たちも、読者の私たちも心の奥底では、「こんなの間違ってる」、「このままでいいんだろうか」と思っているからこそ、その言葉が胸に刺さるんですよね。
現代社会に疲れた人ほど、きっとこのうさぎの一言に救われるはず。次はあなたのモヤモヤ、論破されてみませんか?
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)
商店街の片隅で『パルマ総合クリニック』を営む町医者の一条院長は、いつもニコニコして、能天気なおじさん先生。けれど地元民からは絶大な信頼を集めている。軽い症状で訪れる患者たちのなかには、ときに深刻な病が潜んでいることも……。些細な手がかりから隠された病名を探っていく医療ミステリーです。
医療小説でミステリーと聞くと難しそうな印象がありますが、本作は短編形式で、とにかく読みやすいんですよ。一話につき一人ずつ患者の症状を解き明かしていくスピーディな構成で、「その症状、そんな病気だったの!?」と予想外な真相に驚かされます。
患者の症状は、一見するとただの咳や腰痛、肥満、過労、虫さされ、目の充血……。どれもこれも病院に通わずとも治るものではと思いきや、それが心臓病や脳疾患、臓器不全などの致命的な異常を知らせる危険信号だったりするから怖いんですよ。
そして何より魅力なのが、一条院長の人柄です。鋭い診察力はもちろんですが、患者の悩みに真摯に寄り添い、不安や訴えに耳を傾ける姿に安堵を覚えます。医者とは、患者の命だけでなく心を救うこと。そんな尊さが丁寧に描かれていて、「私もこんなお医者さんに診てもらいたい」と思えました。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)