概要
就活に失敗し、故郷の離れ小島に十年ぶりに里帰りした主人公。
そんな彼のもとに届く意味深なメッセージ。
様子のおかしい幼馴染と思い出せない少女の記憶。
勇者ごっこに明け暮れていた十年前、彼らが封印した魔王とは、一体なんだったのか?
という話です。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!十年前の記憶を辿る、「勇者」だった者の正統派ミステリー
第一話で引き込まれ、まんまと一気読みさせられてしまいました。
正直、ファンタジーなタイトルなために、急にトンデモ設定が出てきたらどうしようかと怯えていたのですが……
ご安心ください、レビュータイトルの通り、正統派です。
まごうことなき上質な青春ミステリーでした。
それでも、「ファンタジーゲーム」が根幹であり、すべての始まりであり、主人公と仲間たちを結ぶ絆であることは確かです。「魔王の封印」のフレーズに偽りはありません。軸を一切ブレさせない手腕には脱帽です。
個人的には、「真相を暴いて終わり」ではないという点が最高でした。
しかも、その問題に「仲間たちとともに」立ち向かうの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!それでも、冒険の書は消えていない
ファンタジーのようなタイトルからは想像できない、
冷徹なロジックで編み上げられた、あまりに上質なミステリー。
読み始めたら、良い意味で鮮やかに裏切られ、ページをめくる手が止まりませんでした。
「勇者は仲間を見捨てない」
かつて裏山を駆け回ったあの日、無邪気に掲げたその誓いは、いつしか残酷な沈黙へと姿を変えていた。
子供たちの罪と罰。島を覆う不気味な選挙の熱狂。一通の絵葉書が告げる終わりの始まり。
読み終えたあと、タイトルの持つ「封印」という言葉の本当の重さに言葉を失うはずです。これは、かつて勇者になりたかった主人公が、大人として過去と対峙するための、十年越しの「本当の冒険」…続きを読む - ★★★ Excellent!!!魔王の封印、それを施した者はいったい誰……?
東京のアパートを引き払い、地元である待流島へ帰ろうとしていたイサミは、フェリーの中で覚えのない絵はがきとそこに記されたメッセージを見る。『十年前、裏山に埋めた魔王の封印が、解かれるよ』。……自分の名前にも使われている“勇”の字をゲームの勇者と重ね、勇者ごっこに興じていたあの頃を思い出した彼は、勇者として魔王の謎へ挑む。
冒頭の引きにイサミさんという人間が色濃く映されている点へまず目を惹かれました。キャラクターの造作力と描写力が本当にすばらしい。
昔の友達――勇者パーティの面々も、なんとなく噛み合わない島の人々も。彼ら自体に力があるからこそイサミさんとの関係性やふとした関わりひとつひ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!痛い勇者ごっこを、ノスタルジーではなく罪と記憶の物語へ変換できている
かなり良かったです。「黒歴史っぽい勇者ごっこ」から始まって、実は子供の善意と無知が取り返しのつかない悲劇に繋がっていた、という反転が強い作品でした。
一番良かったのは、「勇者・僧侶・魔法使い・騎士」という子供っぽい記号が、そのまま痛々しい現実の仮名になっているところです。最初は少しコミカルで、イサミ自身も黒歴史として見ているのに、読み進めるほどその遊びが“現実を理解できない子供たちなりの必死な言語”だったと分かってくる。この反転がとても効いていました。特に、古いセーブデータに残った「騎士ヒメノ」の名前で記憶が割れる場面は、かなり強く惹かれました。