部活動、それは皆で一つの目標を目指して汗を流して頑張ったり、あるいはダラダラと放課後の時間を共有したり。いずれにせよ一人ではできないことをやれるというのは貴重な体験なのかもしれません。というわけで今回は部活動が舞台となっている作品をご紹介。部活動といっても描かれ方は様々。変人集まる演劇研究会による勧誘、部員たちの間での複雑な恋愛模様、最後の大会の目前で起きた殺人事件、コンクールに向けて頑張る昭和の学生たち。千差万別な部活動の物語をお楽しみください。

ピックアップ

変人集う演劇研究会に青春を捧げていいものか?

  • ★★★ Excellent!!!

伊吹高校に通う生徒は皆何らかの部活に所属しなければならない。しかし瀬野蓮冬は四月も終わりに近づいているのに未だに部活に入るかを決めていなかった。そんな蓮冬に目をつけたのが、演劇研究会「サンデーゴリラ」。彼らはあの手この手を使って、蓮冬を勧誘するが、蓮冬には演劇研究会にだけは入りたくない理由があるようで……。

とにかくキャラクターの一人一人が立っているのが本作品の最大の特徴。天然ドジっ子で蓮冬を勧誘しようとしては自滅気味なトラブルを引き起こすクラスメートの桃紙萌々絵に、蓮冬の幼馴染でいつもお姉ちゃんっぽく振る舞う宇仁島羽織、そして学年随一の美少女ながら冷たすぎる言動によりヒャド子というあだ名がつけられた内田有栖。それ以外の演劇研究会の先輩たちやクラスの友人に至るまで男女問わずやたら個性的で、そんな彼女たちに振り回される蓮冬の語りも軽快で非常に楽しくテンポよく読める作品。

ただ楽しいばかりではなくて、周りと較べて自分だけ上手くやれなかったり、つい先輩と対立してしまったり、練習が嫌になってサボってしまったりと、部活につきものの悩みやトラブルもしっかり押さえた青春ラブコメに仕上がっている。


(「部活、どうでしょう?」4選/文=柿崎 憲)

部活内恋愛、それは人間関係の袋小路かもしれない……

  • ★★★ Excellent!!!

男女6名が集まる、慧嶺高校のアナログゲーム部――通称《AGO部》(Oはどこから来たんだ……?)。その新部長萩枝恋は、就任して早々部内の水面下で蠢く問題に直面する。それは部員たちの恋愛関係……。部活内での恋愛などよくある話。しかしここで問題となるのは部員たちの好きな相手と好かれている相手が全員異なるすれ違い状態にあることだ!

誰か一人の恋愛が成就すれば残り全員の失恋が確定する失恋ドミノが完成されてしまう。しかもそんな状況を知らない部員たちは、部長である恋に対して次々と恋愛相談を持ちかけてくるではないか。この緊急事態を解決し部活を維持するため、恋は全員の恋愛が失敗するように裏工作を開始する!

恋をするというのは素敵なことだが、時として誰かの恋愛成就が誰かの不幸に転じるということも起こりうる。特に部活やサークルなどの小さなコミュニティではそれが致命的なことになりかねない。そんな中で表面上協力している振りをしながら、あれこれ画策する恋の奮闘の様子が楽しい。

また主人公である恋も含めて恋愛面とは別に全員秘密を隠し持っているようで、いずれも一筋縄ではいかない面々ばかり。そんなちょっぴりミステリー要素も含んだ、こじれた人間関係が織りなす恋愛劇をお楽しみあれ。


(「部活、どうでしょう?」4選/文=柿崎 憲)

読者への挑戦つきで送る海上の殺人事件!

  • ★★★ Excellent!!!

新聞部に所属する紀野屋島はヨット部の取材中に毒殺事件に巻き込まれてしまう! 海上で起きた事件ゆえに犯行が可能だったのは被害者と同時刻に海にいたヨット部の部員のみ。高校生活最後の大会を目前というタイミングでなぜ犯人は殺人を犯したのか? 刑事たちから第一容疑者と見なされた紀野は幼なじみである藤塚荘司の助けを借りて事件の解決に乗り出すが……。

海の上という事件の舞台こそ珍しいが、その推理の過程はとても論理的。事件の起きた時間や証拠に残された指紋、部員たちの証言など、一つ一つの手掛かりを丁寧に追い、網を絞るようにして犯人の条件に合う人間を探っていく。

そうして手がかりを全て開示してからの読者への挑戦状が出て来るのでつい嬉しくなってしまうのだが、本作はそれだけでは終わらない。最後の最後で一度解いたはずの謎が思わぬ形でひっくり返る。是非実際に推理しながら読んでいただきたい一作だ。


(「部活、どうでしょう?」4選/文=柿崎 憲)

昭和の終わりを駆け抜けるお笑いに燃える高校生の青春ドラマ

  • ★★★ Excellent!!!

時は昭和59年。数年前の漫才ブームに影響を受けた田原真彦は、自分のことを知る者がいない商業高校を受験し、高校デビューそしてお笑い研究部の立ち上げを決意する。目指すは全国アマチュア漫才コンクールの予選通過! しかし、高校生活最初の自己紹介でさっそくスベり倒してしまい、早くも彼の高校生活に暗雲が立ち込める……。

スマホもなければインターネットもなく、当然メールやSNSもない。そんな昭和の時代を舞台に高校生の青春を描いた本作品。女子部員との交換日記でやりとりしたり、最新のお笑いを研究するために各自がビデオに録画したテレビ番組を持ち寄ったりと要所要所で当時の文化を感じさせる単語や風習が出て来るのが時代を感じさせる。

しかし、その一方でクリスマスやバレンタインデー、学園祭や林間学校とイベントや学校行事で胸躍らせるのは今も昔も変わらない。スベったりトチったり、互いのお笑い観で対立したりを繰り返しながら少しずつ前進する部員たちに待ち受ける結末やいかに!?


(「部活、どうでしょう?」4選/文=柿崎 憲)